【ふくしま創生】福島県葛尾村産の羊毛で肌キレイ 良質なケラチン含有 全国初保湿クリーム原料に
高品質な羊肉やスーツ生地の原材料として人気の福島県葛尾村産ブランド羊「メルティーシープ」に、新たな魅力が加わった。村内の畜産会社牛屋が皮膚や髪の健康を保つ成分「羊毛ケラチン」を提供し、保湿クリームを誕生させた。加工処理が難しく、国産羊毛を使った化粧品は全国初。国内外の化粧品やウールの大手企業も高い品質に注目しており、9月上旬に県内外で販売する予定。牛屋社長の吉田健さん(49)は「葛尾発の羊の魅力を国内外に発信したい」と意気込んでいる。 メルティーシープを生産している吉田さんと、栃木県足利市で羊毛加工などを手がけるウィルタスリサーチ社長の深野旭一(あきかず)さん(35)が、村に新たな産業を生み出そうと取り組んでいる。 スーツなどの生地に利用できない太さや色の羊毛は主に廃棄していた。「どうすることもできなかった毛が、こんな素晴らしい商品になるなんて夢にも思わなかった」と吉田さんは喜ぶ。和牛と同じ質の良い餌で育てているため、毛に良質なケラチンが含まれる。化粧品に最適だと考え、美容関係の会社経営者に相談し、2年ほど前から研究してきた。
開発した保湿クリームにはケラチンを一般的な商品の約10倍配合している。アルコールは使わず、敏感肌の人や幼児(1歳以上)にも使える仕上がりとなった。毛刈りを村内、毛の選定や洗浄を足利市で行い、製造は化粧品の安全性を調査している日本化粧品工業会(本部・東京都)が認める工場に委託している。 羊毛を使った化粧品は海外からの注目度が高い。化粧品の中には、ブタの脂を使った品が多いという。宗教上の理由でブタやアルコールを避けている人や、動物愛護を信条とする人たちから「日本で安心して買える商品がない」との声を聞いたことも開発に踏み切った理由の一つだ。 都内のホテルで試験的に試供品を提供し、インバウンド(訪日客)からのニーズを確認した。海外の有名な化粧品ブランドを取り扱う大手企業のコンペ選考対象にも挙がった。 商品名は「VALOMETZ(ヴァロメッツ)」。ヴァロ(光)とバロメッツ(神羊樹)の二つの言葉を掛け合わせ、羊の恵を通して使った人が光り輝けるようにとの思いを込めた。
村のふるさと納税返礼品に加えることも、葛尾むらづくり公社が前向きに検討している。日本最大のウールメーカー・日本毛織(大阪市)は品質の高さを認め、直営店「NIKKE 1896」の神戸店で取り扱う。 吉田社長は「葛尾を盛り上げたいという気持ちでメルティーシープの生産を始めた。これからも全国、世界に葛尾や羊の魅力を発信したい」とさらなる飛躍を誓った。 ■あぜりあで販売へ 「VALOMETZ(ヴァロメッツ)」の価格は50グラムで1万1千円(税込み)。県内では葛尾村復興交流館あぜりあで販売される。問い合わせは同館へ。