旧県立近代美術館、解体で緑地化 閉館8年、地震受け知事方針 富山市に無償貸与 27年4月供用開始
富山県は27日、2016年に閉館した旧県立近代美術館(富山市西中野町1丁目)を解体し、緑地化する方針を明らかにした。富山市に無償貸与し、市は付近の城南公園とともに管理し、27年4月の供用開始を予定する。27日に会見した新田八朗知事は能登半島地震を挙げ、「建物が崩壊しなかったのは幸いだったが、対応を先延ばしにできないと判断した」と説明した。閉館から8年を経て、停滞していた議論が決着する見通しとなった。 県議会9月定例会で設計費などの補正予算を提案し、承認されれば10月から解体と緑地化に向けた実施設計に着手。来年6月に工事をスタートする。解体に5億円以上が必要とみられている。 旧県立近代美術館は、日本の近代建築の基礎を築いたとされる建築家、前川國男氏が監修し、1980(昭和55)年11月に建てられた。耐震性の不足や消火設備に課題があったため閉館。富山市木場町の県美術館に移転した。 県は当初、敷地と建物を民間に売却する方針で検討を進めてきたが、20年度の公募型プロポーザルでは応募者が選定基準を満たさず、地域住民が22年8月、建物を取り壊して公園を整備するように要望した。 県は富山市と協議を重ね、同市が市科学博物館の展示更新や城南公園での天体観察室の整備を計画し、エリアの魅力向上に取り組んでいることから、旧県立近代美術館を解体、緑地化した上で市が一体的に管理するのが最適と判断した。 新田知事は「子育て世帯をはじめとする多くの県民が利用する憩いのエリアとなるように努める」と意欲を示した。城南公園では犬の散歩やジョギングをする人が多いとし、憩いや安らぎの空間を拡大することを付近住民も望んでいると強調した。