【解説】基礎から分かるアメリカの選挙制度!日本が見習うべきポイントは?
郵送投票とは?
郵送投票とは、文字通り郵送で投票する制度で、州の規定に基づいて行われます。 郵送投票の問題は、なんといっても開封して結果が出るまでの時間がかかりすぎること。2020年の大統領選挙で問題になったので、多くの州では郵送投票を数え始める時期が早期化しています。 時間だけではありません。本人確認にも大きな問題があると渡瀬氏は指摘します。 渡瀬氏「前の住人の投票用紙が届いてしまう。郵送投票では、封筒と中の投票用紙のサインが同じであれば有効になってしまう」 本人確認をせずに有効票になってしまうこともあることもあり、不正を呼び起こす余地があると指摘します。 渡瀬氏「不正選挙というかザルのような制度だよね」 また、州によっては「代わりに投票しておいてあげるよ」や、目の前で投票を薦める行為が合法となっている地域もあり、「投票収穫」という用語もあるほどです。 これほどまでに選挙制度が異なるアメリカ。「日本人と同じ感覚でアメリカの選挙を見てはいけない」と渡瀬氏は強調します。 なお、日本でも話題になっているネット投票はどうでしょうか。 渡瀬氏「導入される動きはあると思うが、アメリカの選挙はそれ以前の問題があって、有権者登録をしないと投票権をもらえない」 そもそも選挙に関心がなければ登録をしないので、選挙権が与えられない上、有権者登録をするのに、国民のIDを求める州と、運転免許証でOKな州があることも問題です。 渡瀬氏「運転免許証でいいというのはアメリカ国民じゃなくても投票できてしまう。このように、選挙制度については原始的な状況のことから、戦っているのがアメリカ」 共和党州ではID登録が必要と主張しますが、民主党州は貧困者対策のため、運転免許でいいと主張しているのだそうです。「ネット投票は、日本のほうがまだ導入できるんじゃないかと思います」とのコメントです。
選挙にお金がかかりすぎ?アメリカの選挙事情
分析機関によると、アメリカ大統領選挙・連邦議会議員選挙で使われる選挙費用の合計は少なくとも159億ドル(日本円で2兆4,000億円)。 これらをアメリカではどのようにまかなっているのでしょうか。 渡瀬氏「アメリカはネット献金が盛ん。それぞれネット献金プラットフォームを持っている。登録して、献金したい政治家の名前を入れれば献金できてしまう」 「LINEスタンプを買うくらい」ネット献金が簡単にできる仕組みの結果、ネット献金がないと選挙ができないくらいの状況になっているのだそうです。 ここには、アメリカと日本の政治家の姿勢に明確な違いが見られます。 渡瀬氏「アメリカの政治家のチラシは、『こうした政策を実現したいから献金してください』という提案。寄付をする文化がある・ないではない。ちゃんと選挙をやっているんですよ」 「このお金があれば、この主張をもっと広げられるという世界」であり、寄付文化の問題ではないと渡瀬氏は説明します。 しかし、「ネット献金は、好きなサッカーチームや野球チームを応援するのと同じ感じ」と問題点を指摘します。 渡瀬氏「いいと思う発言をすると、すごくお金が集まったり、過激な発言をしたりするほど集まる。従来型の献金文化と、ネット献金の過激なことを言って集まる文化の2つがある」 続いて「スーパーPAC」という制度です。日本でいう「確認団体」のようなものです。 渡瀬氏「お金をつぎ込んで広告を打ちまくる団体がスーパーPAC。イーロン・マスクの巨大新聞が話題になったが、金持ちが献金するのは目立つからそうなる。そういう団体も小口の献金を集めていたりします」 スーパーPACは、資産家だけでなく、企業や労働団体など、「お金を出して自分たちの政治活動をやる」ものだと言えます。使い道は広告が一番多く、推進する政策と候補者の広告に加え、対抗する候補者へのネガティブキャンペーンも行っています。 渡瀬氏「スーパーPACは諸悪の根源のようになっているが、僕はやった方がいいと思う。やらないと政策がなんだかわからない」 アメリカの選挙では、街頭演説はありません。今回のトランプ候補の狙撃事件が発生したことなどを踏まえ、生命の危険があることから、日本でも取りやめたほうがよいのではないか、と指摘します。 アメリカでの政治活動は、集会と戸別訪問と広告が中心です。 渡瀬氏「日本でも政治家は、集会を中心にきちんと有権者とコミュニケーションし、うまくいけば献金も集まるという形に変えていくべき」 献金に関して渡瀬氏は、「お金が汚いと言っていても政治が力を持てない、役所に対抗できない。自分たちの代表を強くする文化を持ったほうがいい」と主張します。 渡瀬氏「分断が起きても価値観がしっかりして、自分が求めているものがはっきりわかること。それはそれ。分断がない社会で『全員同じ意見』というのも問題ではないか」 アメリカの政治広告はネガティブキャンペーンが多いですが、ネガティブキャンペーンが悪いというより、ファクトに基づいて、相手の問題点をいかにきちんと指摘するかがアメリカの選挙文化だと説明します。 渡瀬氏は、「選挙は政策作りを含めた産業として成り立っている。充実している。ワシントンDCは政治都市。永田町や霞ヶ関と違い、世界中の情報が集まり、情報の価値を重視している。世界的な政治を行うにはそうした機能が不可欠」と締めくくりました。