ファストリ、セルフレジが予感させるテクノロジー企業への進化
RFIDタグを使用するよう柳井氏を説得するのは難題だったという。同技術は数十年前に登場して以来、大幅に価格は下がったが、ボタンやファスナーひとつひとつのコストを計測する企業にとっては、たとえ数円の増加でも見過ごせない。また、この技術が数年後に陳腐化するのではないかという懸念もあった。
丹原氏はなんとか柳井氏を説得したが、RFIDタグが顧客体験を向上させるのに使えると気づいたのは、その後のことだ。レジの合理化で、買い物のレジ打ちに必要な人数は減ったものの、従業員の数は削減されなかった。その代わり、従業員は接客に集中できるようになり、販売促進に貢献したと丹原氏は説明する。
各商品の生産から販売までを追跡できるようにするには、まだまだやるべきことがある、と丹原氏は言う。ファストリは現在、RFIDやQRコードなどのツールを使って、サプライヤーレベルで商品を追跡することを計画している。
「お客さまが欲しい時に欲しいものを届ける」ことがゴールだと、丹原氏はファーストリテイリングでよく使われるマントラを口にした。「スケールしてもまるで一店と同じようなレベルで経営ができるようにやっていく」。
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Reed Stevenson