未翻訳本から読む世界|コロナ禍を「最後のパンデミック」にするための、ドラマチックではないが重要な仕事| Bill Gates『How to Prevent The Next Pandemic』
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ビル・ゲイツはCOVID-19が発生する以前からパンデミックに対する世界の備えに警鐘を鳴らしてきた。テクノロジー業界に身を置いていた彼が公衆衛生の分野に興味を持ったのは、毎年300万人もの子どもが不衛生な環境で下痢を原因として命を落としているという記事を1997年に読んだ時だったという。 自らの慈善事業財団を通じて、ゲイツは公衆衛生や医療分野での投資を行ってきた 。そして2014年頃にアフリカでのエボラ出血熱の流行に接し、新興ウイルスによる将来的なパンデミックの発生に危機感を抱く。問題は「システムが十分に機能していない」事ではなく、「そもそもシステムが存在していない」事だった。2015年にゲイツは「The next outbreak? We’re not ready(次の伝染病? 我々は準備できていない)」と題したスピーチをTEDで行った。動画は4300万回以上の再生を記録しているが、再生数の95%はCOVID-19発生後のものだという。 本書『 How to Prevent The Next Pandemic 』は、COVID-19への各国の対策を評価し、次のパンデミックを防止するために何が必要かを探る一冊だ。ゲイツは本書を2015年に書いておくべきだったかもしれないと振り返りつつ、当時発表をしてもどれだけの人が読んだだろうかと述懐する。 ゲイツの認識は、新たな感染症は今後も発生するが、それをパンデミックに発展させるかどうかは我々の選択次第であるというものだ。WHO(世界保健機関)によれば、過去50年間に1500以上の新たな病原体ウイルスが発見された。それらの多くは人間以外の動物で最初に発見され、やがて人間にも感染が広がった。今後も新興ウイルスの人間への感染をなくすことはできないだろう。
本文:3,477文字
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植田かもめ