【西武投手王国への道】キャッチボールへの意識を改善『生きた教材』となった守護神「打たれようが、何しようが、増田はいつも変わらない」(豊田コーチ)
どんなメニューでも全力を尽くす姿勢
豊田コーチが投手陣を立て直していくなかで「生きた教材」となったのが守護神の増田だった。なかには練習中に気を抜いている投手もいたが、増田はどんなメニューでも全力を尽くした。 例えば20メートル走ではゴール数メートル手前で速度を緩める若手もいるが、増田は20メートルまで駆け抜ける。その姿勢に豊田コーチは守護神の真髄を見た。 「最後の一歩が勝負どころの1球につながるかもしれない。根性論かもしれないけど、そういう姿を若い選手に見てもらいたい。打たれようが、何しようが、増田はいつも変わらない。これが後ろを任せられるピッチャーだと思う」 西武投手陣に刺激を受けているチームメートを尋ねると、22年新人王の水上由伸も29歳の田村伊知郎も、新人の糸川亮太も今季加入した中村祐太も増田の名前を挙げた。 では、増田自身はいつから練習に全身全霊で臨むようになったのか。 「プロに入って年を取ってからですね。本当に成績が出なくなった年もあったとき、練習からもう一度、イチからしっかりやろうと思いました」 増田は13年にドラフト1位でNTT西日本から入団し、3年目にリーグ最多の72試合に投げて40ホールドを記録、翌年クローザーを任された。 しかしチームが10年ぶりにリーグ制覇した18年、状態が上がらずに41試合で14セーブ、防御率5.17と低迷する。プロ1年目から40試合以上投げ続けた疲労もあっただろう。 30歳になって投手人生の分岐点を迎え、増田は練習への臨み方を見つめ直した。誰かを見てではなく、自分自身と向き合って決めたことだ。 「練習でもストイックにやるのは、そこが自分のモチベーションでもあると思います。1日1日やり残したことのないように取り組み、それで試合に臨む。どうしても疲れていたり、今日は気持ちが乗らないという日もあるけど、練習では手を抜かない。それも試合前の調整だと思っています。成績が出なくなったときに結構考えるようになりましたね」 増田は19年に65試合で30セーブをマークし、防御率1.81と抜群の安定感でリーグ連覇に大きく貢献した。それから5年後の今も試合終盤の競った場面で起用され、プロとしての姿勢は西武投手陣の「見本」になっている。 その何よりの証拠が、増田とキャッチボールをしたいという後輩が相次いでいることだ。昨季は森脇亮介と宮川哲(現ヤクルト)が取り合い、今季は新人の糸川が手にした。 「僕でいいのかなと、逆に思いますけどね(笑)」 増田は冗談めかしたが、後輩たちは彼の1球1球から多くのメッセージを受け取っている。
週刊ベースボール