夜間中学のこと知って 開校に向け機運高める、和歌山・田辺
2026年4月に和歌山県新宮・東牟婁地方で夜間中学開校の準備を進めている県教育委員会は29日、田辺市新庄町のビッグ・ユーで「夜間中学」について考えるフォーラムを開いた。文部科学省の職員や県外の夜間中学校長らが講演や討論を通じて、夜間中学の必要性を説き、開校の機運を高めた。 【新宮・東牟婁に夜間中学校 和歌山県「学び直しの場に」、26年度開校目指すの記事はこちら】 夜間中学はさまざまな理由で義務教育を受けられなかった人が通える学校。県内では、和歌山市が25年4月に同市内で開校する。 フォーラムは、夜間中学開校への理解を深めてもらおうと、28日の新宮市に続き、29日に田辺市で開催。2日間で約230人が来場した。 29日の基調講演は、文科省教育制度改革室長の小畑康生氏が「夜間中学の現状と文科省の取り組みについて」を演題に語った。 国は27年度までに47都道府県・20指定都市のそれぞれに少なくても1校設置するよう働きかけていると説明した。 20年の国勢調査によると、最終卒業学校が小学校の人は全国に80万4293人、県内は8737人。義務教育を受けていない人数は県人口の1・1%に当たり、近隣の他府県に比べて多いという。 全国の夜間中学の設置状況は、4月時点で31都道府県・指定都市に53校あり、年々増えている。小畑氏は「夜間中学を必要としている人にその存在を知ってもらい、通ってもらえるように、皆さんに周知をお願いしたい」と述べた。 「夜間中学の学びとは(姫路・徳島の事例から)」をテーマにしたパネルディスカッションでは、摂南大学講師の江口怜氏がコーディネーターを務め、兵庫県姫路市立あかつき中学校校長の山下雅道氏、徳島県立しらさぎ中学校(徳島市)教頭の山田哲也氏、小畑氏が登壇した。 夜間中学の生徒は、学びたい気持ちが強い人が多く、生徒一人一人には多様な背景があり、生徒への向き合い方、地域とのつながりの重要性などについて触れた。江口氏は「夜間中学はどの地域にも必要。誰一人取り残さない地域にしていきたい」と締めくくった。 県教委は夜間中学の体験授業会・個別相談会を11月から来年1月にかけて3回、新宮市内で開催する予定。
紀伊民報