美少女を立体化する技術に感動…!令和のプラモデル業界を席巻する新ジャンル”美プラ”深淵なる世界
プラモデルといえば「ガンダム」シリーズに代表されるロボットをはじめとした〝メカニック〟ものが主流だった。メカがプラモデルの王として君臨していた時代は長かったが、ここ数年で大きな変化が起きている。 【画像】た、楽しい!…水着美女や男装の麗人もいる美プラコレクション 令和の時代になって、〝美プラ〟と呼ばれる美少女を組み立てるプラモデルが躍進しているのだ。 ホビーに関する情報を日々発信しているアキバ系情報サイト〝モエヨドットコム〟の管理人であり、熱心な美プラファンでもある“もんぷち。”氏に聞いた。 ――そもそも美プラとは何なのでしょうか? 「ガンダムのプラモデルを通称〝ガンプラ〟というのと同様、美少女を立体化したプラモデル〝美少女プラモデル〟の通称です。一部では〝ギャルプラ〟などとも言われることもあります」 ――どんな購買層に刺さっているのですか? 「塗装せず素組で楽しむライトなガンプラユーザー層や、美少女フィギュアのコレクターが中心かと思います。昨今の物価上昇とともにホビーも価格が高騰していますが、その中で比較的安価(2000円台~)で種類が多いので、中高生でも手を出しやすい。若い層にも人気があると思います」 ――現在の代表的なブランドとそのメーカー名は? 「群雄割拠となりつつある美プラ業界ですが、先陣を切っているのは元祖といってよいコトブキヤさんの『フレームアームズ・ガール』シリーズや『メガミデバイス』シリーズが挙げられます。そこに追いつけ追い越せと猛追しているのが、プラモデル業界の雄・バンダイさんの『30MS』シリーズ。〝美プラ〟よりはるか以前から市場に完成品可動フィギュア『figma』シリーズを投入しているマックスファクトリーさんの『PLAMAX』シリーズも知名度を上げつつあります」 ――“美プラ”誕生からここに至る経緯を教えてください。 「まず、2010年ごろにコトブキヤさんが『一撃殺虫!!ホイホイさん』というプラモデルを発売しました。当時の謳い文句は〝美少女型プラキット〟。その後、コトブキヤさんから単発のキャラクターもの美少女型プラキットがいくつかリリースされましたが、ひとつのジャンルというよりは、プラモデルの中の変わり種という程度の認識でした。 その後、コトブキヤさんが『フレームアームズ・ガール』シリーズを始めたことで状況は一変。美少女フィギュアユーザーを巻き込んだ大人気商品となりました。その結果、すでに確立していた〝美少女フィギュア〟と区分けする意味も含め、自然発生的に〝美少女プラモデル〟と言われるようになり、その略称で〝美プラ〟となったという認識です。ただこれはあくまで私が見てきた中でそう解釈しているということで、実際の経緯とは異なるかもしれません」 ――美プラ独特の技術、アイデアなどはありますか。 「美少女をプラモデル化する際、最大の難所となったのは〝面相(顔部分の塗装)〟でした。ライトユーザーには難しく、瞳の部分はデカールを付属させるなどして対応していたのですが、それでもハードルが高かった。 そこで美少女フィギュアのメーカーとしても名高いコトブキヤさんが面相部分を美少女フィギュアのノウハウを活用した〝タンポ印刷〟という技術で再現しました。最初から顔部分のパーツは完成している状態で商品に封入したのです。面相のことで購入を躊躇していたお客さんが手に取りやすくなり、一気に広まった印象があります。 美プラで思い出深いのがバンダイさんの『Figure-rise LABO』シリーズです。とくに第一弾の〝ホシノ・フミナ〟は〝表面の成型色の厚みを調整することで、その下にある成型色を投下させて自然な陰影を作り出す〟という、現在でもおそらくプラモデルを知り尽くしたバンダイさんでしかできないような超技術を用い、プラモデルで固定ポーズの美少女フィギュアを生み出すという離れ業をやってのけた。これはいまも業界で語り草となっています」 実際、ユーザーは美プラをどう見ているのか。ファンの声も拾ってみた。まずは美プラという言葉が生まれるずっと前からの可動女性フィギュアのファンで、ガールズプラモを初期から追いかけているマニアのKazu氏。 「〝ウチの子感覚〟が一番の魅力じゃないかと思います。好みのパーツで理想の女の子フィギュアを作ることができる。アニメやマンガといった、すでに決まった背景を持つものとは違うので、背景や世界も自分で妄想できる。女性を中心に人気な着せ替え人形、ドールに近い存在だと思っています。 スケールさえ同じなら、他社製品のパーツも使えるから、遊びの幅、想像の幅がすごく広い。デパートなどにあるガチャガチャで手に入るミニチュアの鞄などの小物や、100均で売っているグッズなどがアイデア次第で無限に使えます」 ガンプラや仮面ライダーら男性向けのホビーを愛好していたが、いまは美プラにハマっているというK.O氏は「キャラクターもののアイテムとしての魅力を感じている」と言う。 「メーカーオリジナルの美プラも好きですが、人気アニメのキャラが美プラ化されたものも好きです。かわいくて出来がよければなおいい(笑)。ロボットものにはロボットの良さ、美プラには美プラの良さがありますね。美プラで言うと、現実の美少女には関節の線は入ってませんし、服は布でできています。 なので関節の線を衣装でうまく隠したり、布の衣装をプラスチックや樹脂で再現するわけですが、2次元でしかできないものをこう解釈してプラスチックの立体にするのか! という技術や工夫に感動して、それが次の購入意欲に繋がります。魅力ですよね。僕の場合、子供の頃のおもちゃ好きが長じて美プラにハマっているので、ポーズを決めたり、動かして遊べるのも魅力です」 各々が思い思いに楽しんでいる美プラの世界。今後どうなるのか、展望を前出・もんぷち。氏に聞いた。 「コトブキヤさんやバンダイさんをはじめ、グッドスマイルカンパニーさん、マックスファクトリーさん、アルファマックスさん、アオシマさん、ボークスさん、最近のワンフェスで参入第一弾を発表されたPMOA(プラム)さん等々、美少女フィギュアメーカーとして有名なメーカーさんたちが続々と美プラを発売・発表しています。そこに中国のメーカーさんも加わってきて、美少女フィギュアブームの初期を思わせる熱気や勢いを感じるジャンルになってきています」 マニア向けホビーから、グッと一般寄りになり、まだまだ拡大するであろう〝美プラ〟の世界。飛び込むなら、まさに今、かもしれない。 取材・文:来栖美憂 くるす・みゆう フリーライター。人文、社会問題、サブカルチャーなどを主な守備範囲とし、雑誌・新聞・ネット等、メディアを問わず、記事の取材・執筆を中心に活躍。著書多数。 取材協力:アキバ系情報サイトmoeyo.com (モエヨドットコム) URL:https://www.moeyo.com/ X ID:@MoeyoCom
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