野球界の新潮流。選手のパフォーマンスを最大化させるパーツ理論・外部トレーナー島田貫任
転機となったプロ野球選手からのメッセージ
転機となったのは、大学4年の夏。島田さんは選手としてプレーする傍ら、自分が学んだ身体の使い方について、インスタグラムで発信していた。島田さんは投稿内容について、素人に毛が生えたものだったと振り返っているが、そのインスタグラムのアカウントに「身体の使い方を聞いてみたい」と予期せぬ人物から連絡があった。 それは、プロ野球の世界で活躍する現役選手からだった。その選手は、既に一軍の舞台でも活躍しており、チームに欠かせない存在となっていた。プロの一線で活躍する選手が見ず知らずの大学生から学びを得ようとする貪欲な姿勢に島田さんは感銘を受けた。 プロ野球選手の思わぬ連絡から、アスリートのサポートに携わることになった島田さん。実際にサポートを始めてからも、試合後にも遅くまで練習に取り組むプロ野球選手の表では見られない相当な努力量を目の当たりにした。こうしたプロ野球選手の貪欲な姿勢に心を打たれ、なんとかためになりたいと考えた島田さんはアスリートをサポートする進路を選んだ。自分が野球を辞めるという決断に後悔はなかった。
プロ入りを目指して大学に進んだ島田さんだったが、結果としてトレーナーという立場でプロ野球選手やプロを目指す選手と関わることになった。
人のために生きるのが、トレーナーの仕事
トレーナーを始めた当初は声を掛けてくれた選手へのサポートが中心だったが、次第に他球団やアマチュア球界にも島田さんの評判が広がっていった。当時はSNSなどで自身の活動について積極的に発信していなかったが、選手の紹介によって気付けば30人以上ものNPB選手に対して指導を行った実績が付いていた。冒頭に紹介した紅林選手など、島田さんのサポートを受けた選手が結果を残したこともあり、今では指導を受けたいという選手が殺到している。現在は野球選手のサポートがメインとなっているが、地面に足が付くスポーツであれば、パーツ理論を用いてサポートが行えるという。 2023年でトレーナーに転身してから2年目を迎えるが、外部のトレーナーとしてアスリートに携わる難しさも痛感している。当然ながら、島田さんの指導を受ける選手の所属チームにも、コーチや監督などの指導者がいる。所属チームの指導者とは方向性の違う指導をしてしまう可能性もあるだけに、島田さんは外部トレーナーとして「選手の不利益になることはしない」と心掛けている。 トレーナーとは、自分の持っている100の力を使って、選手にその力を与える仕事だ。下手に出しゃばることはせず、選手ファーストで取り組んでいる。指導を通じて自分の信者を作りたいわけではない。指導を受ける選手には、「自分の信念を持って、情報を取捨選択してください」と常々伝えている。