株と不動産を駆使、「億超え資産」を築く敏腕投資家の手法
株式投資で1億円以上を稼ぎ出し、個人投資家から目標とされる存在の「億り人」。では、億り人はどのように資産形成を行ってきたのか。その投資の極意をひもとく連載企画が「億り人の『極秘投資術』」です。 今回は公認会計士で、個別株投資によって21年で9億円稼いだ敏腕投資家のみつさんです。主に配当金の支払い可能性を重視してバリュー投資を実践しているというみつさん。前編では、株式投資の収益を不動産へ投資し、10億円を超える資産を築いた手法について聞きました。 私が株式投資を始めたのは、1987年に起きたブラックマンデーの直前のことです。最初に買った銘柄は、ミノルタ(現:コニカミノルタ<4902>)でした。父が株式投資をしていたため、子供の頃からチャートなどを見ており親名義の証券口座で株式を買ったことがきっかけでした。 当時はいわゆるバブル相場の真っ只中です。現在も、日経平均株価が4万円台に突入するなど、「株価はバブルなのではないか」といった声が聞こえてきますね。 当時の私は中学生だったため、詳しい状況などがわかるわけではありませんが、バブル相場は現在と比べものにならないほどの熱狂ぶりだったように思います。 ■現在の相場は「冷静な状態」だ 例えば、当時は土地の含み益の推計値なども勘案する「Qレシオ」などを用いて当時の株価を正当化していました。当時の日本企業は保有する土地などに莫大な含み益があり、それも企業価値に入れて株価を正当化しようとしたのです。 しかし、実際は、土地の価格自体が収益性を無視した高騰していたわけで、このような「Qレシオ」が高騰した株価を正当化する材料にはなりえなかったのです。また、当時はほとんどの銘柄が配当利回り1%の以下で当時の株式投資の本には「PER50倍が基本、配当利回りは無視して良い」と当然のように書かれていました。 そして、リアルな経済活動においても、熱狂という言葉がぴったりくるほど、世の中全体が浮かれていました。 それに比べれば、今は日経平均株価こそバブルピークを超えましたが、社会全体ではそこまでの熱狂ではありません。むしろ、配当利回りでまだ買える銘柄も残っているうえに、今後も株主還元重視の動きは続く可能性が高いと思っています。 PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)も常識的な水準を保っていることからも、無理して買っていないことがわかります。一部、理屈に合わない株価をつけている銘柄もありますが、全体的に見れば、日本の株式市場は極めて冷静な状態であると言えるのではないでしょうか。 ■超低位株への投資で1000万円が6000万円に 話を戻しますが、株式投資自体は中学時代に始めたのですが、高校時代は受験勉強、大学時代は公認会計士資格の勉強に専念していたので、一時お休みしていました。 2000年から信用取引を始め、いよいよ本格的に株式投資を始めるようになりました。父が亡くなり、相続した遺産が1000万円程度あったので、それを元手にしたのです。監査法人で働いていましたが、、当時は規制が緩く、所属監査法人の関与先は当然ダメでしたが、それ以外の銘柄への投資は問題ありませんでした。 投資先としては、主に超低位株だった長谷工コーポレーション(1808)やオリエントコーポレーション(8585)などをレバレッジもかけてかなりの金額を購入しました。これが非常にうまくいき、2003年には1000万円を7000万円ほどに増やすことができました。 それをさらに株式投資に回して大きく増やすという手もありましたが、それはせずに、5000万円で不動産を購入しました。以来、株式投資で金融資産が増えると、それで不動産を購入して、安定した家賃収入を確保するという投資スタイルを続けています。 それ以降も、新興銘柄を中心に年間数千万円規模で儲けることができました。当時はFIRE(経済的自立と早期リタイア)という言葉はありませんでしたが、家賃収入で最低限の生活ができればいいなと考えて、それ以降も株式投資で得た収益を不動産へ投資していきました。 ■株式の売却益を不動産へ投資 なぜそのような投資スタイルを取っているのかというと、精神的に安定するからです。 確かに、株式投資は大きなリターンが期待できます。私自身、これまでの株式投資で得た生涯収支は9億円以上のプラスですから、株式投資の儲けを不動産に変えず、ひたすら株式投資に資金を注ぎ込めば、さらに大きな収益が得られただろうと思います。 しかし、株式投資は大きなリターンが期待できる反面、非常に不安定な側面も持ち合わせています。最近は配当利回りに注目して投資する人も増えていますが、そうは言っても、株式投資でリターンを得ようとするならば、値上がり益を狙う必要があります。この値上がり益は、株価に左右されるため非常に不安定ですよね。 その点、不動産はこの不安定な値上がり益による収益確保を、安定した月々の家賃収入に変えてくれます。現在、保有している不動産の資産価値が12億円で、借入は3億円ほどありますが、年間の返済金額が3900万円であるのに対し、家賃収入は1億2000万円あるので、返済に窮することはありません。 ■不動産の1棟買いに妙味あり 現在の私の投資手法は、バリュー株を中心に、信用取引も積極的に活用するというものです。株主総会にも積極的に出席して、経営陣に質問もします。 そのため、企業経営についてもいろいろ思うところはありますが、不動産経営と企業経営を比べたとき、キャッシュを多く入れて、適正な値段で不動産を購入するという前提条件は必要ですが、はっきり申し上げて不動産経営のほうが簡単です。 不動産経営も企業経営も、資産を活用してキャッシュフローを生み出す行為ですが、事業を行うとなると、ビジネスを動かすために人を雇わなければなりませんし、事務所を借りて、仕入れや在庫の管理も必要になります。銀行からの借り入れも発生します。 その点、不動産をキャッシュで購入すれば、あとは空室が発生しないようにするだけで、安定した家賃収入が得られます。しかも、ルールや法律も確立されているので、その点も安心できます。 唯一、不動産投資でお勧めできないのは、新築ワンルームマンション投資です。収益性が低く、節税になるとうたわれていますが、むしろ節税分損しているので、投資する意味がありません。 不動産投資をするならば、1棟買いが基本です。そして、1棟買いができるように、必要な資金を株式投資で稼ぎ、収益が得られたら不動産を購入する。生活資金は家賃収入を充てる。それを繰り返すことによって、ここまで自分の資産を増やしてきたのです。 後編では、実際の私の詳しい個別株投資手法や『会社四季報』の活用法、現在足元で注目している銘柄などについてお話ししたいと思います。 (構成:鈴木雅光) ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
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