新入社員がインスタにアップした「1枚の写真」が大トラブルに…社長を激怒させた「まさかの投稿」の中身
1枚の写真が大問題に…
次の日の夕方。自席で作業をしていた甲社長のもとにB谷部長(総務部長で35歳)が来ていった。 「友人に勧められて最近インスタを始めたんですが、いろんな人の投稿を見ていたらこんな画像がありました。ちょっと見てください」 B谷部長は自分のスマホから、A上さんのインスタを甲社長に見せた。甲社長はスクロールしながら 「へーっ、A上君インスタやってるんだ。写真、なかなかいいセンスしてるね。特にこの受付の馬にまたがっているところなんて笑えるよ」 と感心した口調で言った。B谷部長は一旦甲社長からスマホを取り上げ、ある投稿を提示した。 「そんなこと言ってる場合じゃないです。問題はこの写真。企画会議で出したチェアのデザイン画ですよ」 「えっ?」 甲社長は目を凝らして画像を見直すと、確かにB谷部長の指摘通りだった。甲社長は顔を曇らせた。 「これはまずい。もしライバルの乙社(甲社と同業他社)に見つかったら厄介だ。コメントには『新製品です』って書いてあるし、ご丁寧に商品説明まで付いている」 翌朝、A上さんが出社すると、B谷部長から「自分と一緒に会議室に来るように」と促され、部屋に入ると腕組みをした甲社長がソファに腰かけていた。 甲社長は重い口を開き 「A上君、インスタやってるでしょ?」 と尋ねた。 「はい。それが何か?」 「B谷君、例の画像を見せてやってくれ」 B谷部長は自分のノートPCからA上さんのインスタにアクセスし、デザイン画の写真を出し言った。 「このデザイン画や商品説明は会社の秘密情報だよ。もし乙社や他のライバル会社がこれを見つけ、ウチより先に類似商品を発売されたら大変なことになる」 「えっ、そんな……」 A上さんは瞬間的に血の気が引いた。まさか、自分の無邪気な行動が会社の存続にかかわるなんて思ってもみなかった。いつもは温厚な甲社長が激怒した。 「このシリーズは会社の威信をかけて私や企画課のメンバーが必死で考え、作り出したものだ。もし世に出せなかったらみんなの苦労が水の泡。なんてことをしてくれたんだ!」 A上さんはその場で謝ったが、甲社長は、 「君はもう会社に来なくていい。クビだ!」 と言い放った。A上さんはその瞬間、頭が真っ白になりフラフラとその場に倒れこんだ。 * * * 今回A上さんがしたことは「企業秘密の漏洩」にあたる。このような新商品情報が同業他社に漏れたら企業の競争力が低下し、甲社に大きなダメージを与えることになるだろう。 従業員が企業秘密を漏らしてしまうのはなぜか? 個人のSNSからの情報漏洩リスクを抑えるために必要な対策は? そして、A上さんに「クビ」と言い放った甲社長の真意とは……。詳しくは後編記事〈インスタにアップした「1枚の写真」で新入社員に「まさかのクビ宣告」…SNSで情報漏洩した23歳の意外な「その後」〉で解説する。
木村 政美(社会保険労務士)