料理人・笠原将弘さん、シングルで育てた子どもたちとの「リアルな食卓」。家庭の献立にルールはいらない
笠原家の普段の食卓。家庭の献立にルールは要らない
――ところで、笠原家の食卓はいつもどんな感じなのでしょうか? 笠原:普段は全員がそろってごはんを食べることは少ないですけど、コロナ禍のときは、みんなでよく食べていましたね。わが家は、基本ハチャメチャなんですよ。みんなに「今日、なにが食べたい?」と聞くと、たいてい答えがバラバラで。カプレーゼもあれば、肉ジャガも麻婆豆腐もというように、ジャンルもなにも関係なくみんなの好きな料理を並べることが多いですね。 ――それはそれで、楽しそうですね。家庭の食卓ならではというか。 笠原:そう、極論を言えば、家庭の献立にルールは無用なんですよ。こうしなきゃとか、何品つくらなきゃとか、そんなことに縛られる必要はないんです。 僕は子どものころ、両親が店で働いている間は祖母の家によく預けられていたんですが、そのときの食卓がもう見事に「なんでもあり」の世界で。わかりやすく「今日のメニューはこれ」という感じではなく、昨日揚げた天ぷらがあったり、お隣からもらった佃煮の壺が出ていたり、おじいちゃん用に刺身が用意されていたり。食卓いっぱいにちょこちょこ並んだ料理を片っ端から食べるという感じでした。でも、子どもながらにそんな食事の時間が楽しくて、あれこそ僕の食卓の原風景ですね。 ――「おいしい」と「楽しい」は料理の基本ですよね。 笠原:僕も仕事ではいろいろなことを言っていますが、本音では祖母の家のような食卓でよし! とも思っています。でも、当時から自然と自分でバランスのいい組み合わせを無意識のうちに選び取っていたような気がしますね。から揚げや天ぷらを食べたら口の中が脂っこくなるから、次はサラダや漬物を食べようという具合に。 ――まさに、献立を立てるときのベースになる考え方ですね。 笠原:そうですね。話がちょっとずれますが、僕は店のスタッフと居酒屋とかに行くと、あえていちばん若い子に注文をさせるんですよ。メニューをひととおり見て、いかにバランスよくチョイスできるかが問われるわけだけど、こうしたことでも献立力が鍛えられるんですよね。この料理に合わせるならこれがいいかなと、ちょっと意識するだけで献立上手になりますよ。