《ブラジル》現地で活躍する日系企業の今=品質で勝負するティービーピー社
「ブラジルで活躍する日系企業の今」を紹介する本連載の第18回目は、花王株式会社の在ブラジル子会社であるティービーピー社(以下TBP)の馬場優社長と石原一副社長に話を聞いた。この4、5年の間にサンパウロでも身近なドラッグストアやインターネットで、日本を代表する花王製スキンケアブランドのビオレ(Bioré)製品を購入できるようになった。その輸入・販売を手がけているのが同社であり、ブラジルでの受け入れの高さをみて今後は輸入製品のみならず、ブラジル国内での製造も視野に入れて事業拡大をめざしている。
世界第4位の美容大国ブラジルで事業拡大
TBPは2012年に設立され、2年後には花王がヘアサロン向け製品の輸入販売を手がけ始め、2017年から三井物産株式会社とブラジルでビオレ製品の販売・マーケティングに関する業務提携を行い、市場調査を兼ねたトライアル販売を実施してきた。 トライアル販売の結果、実際にブラジル市場でビオレ製品が受け入れられたと判断したことから、今年2月、三井物産による第三者割当増資の引き受けが合意され、持分割当契約書が締結された(出資比率は花王が70%、三井物産が30%)。CADE(ブラジルの競争当局)の承認後、4月より両社の共同事業として新たな体制で本格販売を開始した。 ブラジルは、米・中・日に続く世界第4位のビューティ・パーソナルケア市場(約3・5兆円)を有する美容大国で、7・7%の年間市場成長率が見込まれている。同社はこの魅力ある市場で、オンリーワンの価値を提供できるスキンケア事業に注力し、消費者や社会へ日本オリジナルのよりよい製品・サービスの提供をめざす。
ビオレ取扱店は全国4300店舗に
現在、ビオレ製品は全国12の有名チェーン店と二つのECサイト(ネットショップ)で販売されている。売上の約半数はブラジル南部と南東部の七つの大手ドラッグストアチェーン店で、それらを合わせた取扱店舗数は、2023年3月時点でブラジル全州の約4315店(全5231店舗の内)だ。 2017年にトライアル販売をスタートさせた時は、サンパウロ市内のドラッグストアDroga Raiaの45店舗のみだったが、その3カ月後には150店舗に拡大され今日に至る。 日本では高い知名度を誇るビオレも、多くのブラジル人には未知の製品である。店頭にお試しコーナーを開設して実際に使用感を確かめてもらい、その良さを伝える地道な営業を積み重ねてきた。初めて使用したブラジルの顧客からは、「使い心地がとても気持ち良く、毎日使える」「今までこんな製品はブラジルには無かった」と評価され、新鮮な肌感覚の感動をSNSでシェアされることも多く、広く製品が知れ渡るようになった。 最初に販売したのは、オイルタイプのメイク落としで、過去のブラジルには実用性の高いメイク落としはなく、すぐに女性たちの関心を引いた。その後、ニーズの高いスキンケア用品を厳選して、現在は28種類(日焼け止め4種、メイク落とし8種、洗顔料10種、ファイシャルケア用品6種)を日本から輸入販売している。 また、花王アメリカ社が製造しているヘアケアブランドのジョン・フリーダ(John Frieda)製品も21種(縮れ防止11種、ブロンドカラー補正7種、ボリュームアップ3種)を輸入販売している。
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