パワーエックス、横浜港内に電力拠点。市・東電 3者覚書、電気運搬船6隻投入へ
パワーエックス子会社の海上パワーグリッド、横浜市、東京電力パワーグリッドの3者は24日、世界初の電気運搬船の受け入れ基地となる電力供給拠点の構築に向けた覚書を締結した。電気運搬船の陸側の受電設備を横浜港内に整備する。3者は電気運搬船の実現により将来、関東沖の洋上風力発電のポテンシャルが飛躍的に拡大すると想定。同船6隻を投入し、設備容量1ギガ(ギガは10億)ワットの洋上風力から横浜港に電気を輸送する構想を示した。海上パワーグリッドの伊藤正裕代表取締役は「2020年代後半から30年代に実現させたい」と明言した。 3者は横浜港におけるカーボンニュートラルポート(CNP)形成に必要となる電力ネットワークの将来構想や、新たなグリーン電力供給拠点の構築検討へ覚書を結んだ。 横浜市は大型クルーズ船への日本初の陸上電力供給の実現、横浜市臨海部へのグリーン電力供給を通じ、横浜港でのCNP形成の推進を目指す。 東京電力ホールディングスの送配電事業会社である東京電力パワーグリッドは、横浜市臨海部の電力需給バランス変動への対応に不可欠な電力供給拠点の整備を検討し、電力需給の安定化を図る。 海上パワーグリッドは、世界初となる電気運搬船による洋上風力発電由来のグリーン電力送電の実現を狙う。 横浜市役所で開いた締結式には、横浜市の山中竹春市長、東京電力パワーグリッドの佐藤育子常務執行役員、海上パワーグリッドの伊藤代表取締役が参加した。 冒頭あいさつした横浜市の山中市長は「覚書の締結は日本初、世界初のチャレンジが詰まっている」と強調し、「この取り組みをCNP形成につなげ、横浜から日本の脱炭素をけん引していく」と語った。 横浜市は昨年5月、横浜港でのCNP形成に向け、パワーエックスとの間で電気運搬船と蓄電地の利活用に関する連携協定を締結。電気運搬船による輸送実現には大規模な充放電施設が必要で、この整備が課題となっていた。 そこで東京電力パワーグリッドを加えた3者で、グリーン電力供給拠点構築に向けた検討を進めていくことを決定。山中市長は「世界初の取り組みである電気運搬船による洋上風力由来のグリーン電力の供給が可能となり、再エネ調達の幅が果てしなく広がる」と連携の意義を強調した。 続いて東京電力パワーグリッドの佐藤常務が「当社が電気運搬船事業と連携して新たな電力供給拠点の構築を検討していくことで、横浜市のCNP構想のさらなる推進を期待する」と述べた。 最後に海上パワーグリッドの伊藤代表取締役が電気運搬船による関東沖の洋上風力発電ポテンシャルの拡大の見通しと、それに対応する事業構想について説明した。 海上パワーグリッドは先月の法改正で洋上風力の設置場所が現行の領海内から排他的経済水域(EEZ)に拡大したことを受け、水深300―2000メートルの海域で洋上風力の新たな需要が生まれると想定。中でも風況・風力が強い関東沖に洋上風力の一大拠点が立ち上がるとみており、「横浜港がその受け入れ基地の一つになる」と指摘した。 関東沖で設備容量1ギガワットの洋上風力が稼働する場合、設備利用率45%の前提で、横浜港に整備する受電設備まで電気を輸送するのに蓄電容量9ギガワット時の電気運搬船が必要と説明。この需要に対し、バッテリー容量約500メガワット時の200TEU型電気運搬船6隻を投入する構想を明らかにした。
日本海事新聞社