日本人学校児童殺害、国内の中華学校に波紋、一部に脅迫メールも…「どんな国籍でも子どもを被害に遭わせないで」
中国・深センで、日本人学校に通う10歳の男子児童が、登校中に刃物を持った男に襲われ、死亡した事件。日本国内でも、中国や台湾、華僑の子どもたちが通う中華学校に波紋が広がっている。 ●中華学校の登校を撮影した動画に「中国に帰れ」 報道によると、中国の地元警察は事件について「単独犯による偶発的事件」と発表しており、犯行の動機は明らかにされていない。 中国では今年6月にも、蘇州にある日本人学校のスクールバスが刃物を持った男に襲撃されて、日本人母子がけがを負ったほか、止めようとした中国人女性が亡くなる事件が起きていた。 そうしたことから、一部のSNSで、日本人への憎悪が背景にある「ヘイトクライム」ではないかという指摘がされており、中国政府の対応に批判が強くなっている。 こうした状況を背景にしてか、国内にある中華学校のうち、一部に脅迫メールが届いている。また、SNSには、ある中華学校で、子どもに親が付き添って登校する様子を撮影した動画が投稿、「そんなに心配なら中国に帰れ」といったコメントが集中し、拡散している。 ●中華学校の保護者に広がる不安 「学校からは、できるだけ子どもを送り迎えするよう言われています。近くの警察署にも相談して、パトロールを強化していると聞いています」 そう不安気に打ち明けるのは、台湾系中華学校に子どもを通わせている女性だ。 「うちは台湾系なのですが、中国系と間違われているようで怖いです」と話す。 この中華学校には、華僑や保護者が台湾出身の子どものほか、日本人の子どもも多く通っており、保護者には不安が広がっているという。 ●警察と連携し、警戒強める 国内には、5校の中華学校がある。中国の革命家、孫文が提唱した華僑の子どもたちのための教育をおこなう機関として開校した。その後、政治的な経緯から、中華人民共和国(中国)系と中華民国(台湾)系の中華学校に分かれた。 中国系は横浜山手中華学校と神戸中華同文学校、台湾系は横浜中華学院と東京中華学校、大阪中華学校となっている。 中国系と台湾系ではそれぞれ自国の教科書を使っており、教育も異なっている。近年では、中国語と英語、日本語が学べるインターナショナルスクールとして日本人保護者の人気も高い。 しかし、深センの事件後、一部の中華学校は警察と連携、警戒を強めている。 子どもを台湾系の中華学校に通わせている日本人男性は「深センの事件でお子さんが亡くなったことは、同じ親として本当に辛いです。ただ、だからといって中華学校の子どもたちを標的にするのは、違うと思います。どんな国籍であっても、子どもが被害に遭うようなことはやめてほしいです」と話している。
弁護士ドットコムニュース編集部