兵庫県

　神戸市は、人工島・ポートアイランド（中央区）に医療関連の研究機関や企業が360以上集まる「神戸医療産業都市」について、将来像をまとめた報告書を発表した。阪神大震災の復興プロジェクトとして始まって四半世紀が過ぎ、国内最大級の医療クラスター（集積地）に成長する一方、島内の未利用地がほとんどなくなり、市内全域で発展を目指す方針を打ち出した。

　神戸医療産業都市は震災から3年後の1998年にポートアイランド2期エリアで始まり、再生医療など最先端の研究機関や企業、病院の誘致を推進。理化学研究所やスーパーコンピューター「 富岳（ふがく）」を中核に363社・団体が集積し、2023年度末で1万2700人が働く。

　市立医療センター中央市民病院をはじめとする高度専門病院群も整備。20年度の経済効果は1562億円、税収効果は69億円に上るなど右肩上がりの成長を遂げた。

　しかし、他の地域でも医療やバイオ関連の企業誘致が進むなど、存在感が低下する課題も浮上していた。市では昨年12月から、有識者会議で10～20年先の将来像を検討。その結果、市全域で人材の集積・育成や企業への支援を強化するほか、▽産学官医の連携支援を強化▽AI（人工知能）など成長分野の産業化促進▽25年の神戸空港国際化を見据えた海外企業との協業促進――といった方針をまとめた。

　質の高い医療サービスの提供や、介護、ヘルスケアなどの研究開発、事業化を進め、市民の健康福祉の向上にも貢献するとした。市は「経済復興は遂げたが、市民への利益還元という点はまだ十分でない。産業が広がると雇用される人も増える。産業化を今後の重要課題ととらえ、来年度以降の施策にも生かしていきたい」としている。