「再会」した水原監督に勝つ野球を学ぶ 反抗⁉ 試合中に敵ベンチから抜け出して帰宅 話の肖像画 元プロ野球選手・張本勲<13>
《張本さんも反抗?! ある試合の守備固め。一度左翼の守備に就いてから交代を告げられた怒り?で自軍ベンチに戻らず、敵ベンチから球場を抜け出してそのまま帰った〝事件〟…》
代えられるのはいい。でも守備に就いてからは屈辱です。処分は覚悟してました。次の遠征で監督に呼ばれました。「お前の気持ちはわかる。でも監督には直感というものがある。守備に就いてから何か打球が行きそうだなと。代えずに負けたら悔いが残る。これが勝負勘だ。お前が将来監督になったらわかる」って。納得するしかなかった。
水原さんは巨人で実績を作ってきた人です。指導者が代わってチームの雰囲気もガラッと変わった。これが勝つ野球なのかって。最後まで優勝を争った南海には直接対決(10月15日、駒沢球場)で敗れたが、チームは83勝52敗5分けで前年の5位から2位です。私は打率3割3分6厘で初の首位打者を獲った。「やればできるじゃん」の思いでした。南海の鶴岡一人監督の胴上げが始まりました。見たくない。引き揚げようとすると監督が「全員出てこい」、「胴上げ、見とけ! この悔しさを忘れるな」って。ベンチの前で見させられたんです。今、日本でもアメリカでも相手の胴上げを見てるでしょ。でも全員かどうか。あのときは監督命令で全員でした。
で、あくる年に優勝ですよ。(聞き手 清水満)
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