女子BOXのW世界戦が伝えたV5柴田の覚悟と新王者・古川のど迫力
女子ボクシングのダブル世界戦が、リオ五輪の最中、草加市文化会館で行われ、WBA女子世界ライトミニマム級王座決定戦は、女子大生ボクサーの同級2位の古川夢乃歌(22、ワタナベ)が、二児のママさんボクサーである同級3位の西村聡美(35、折尾)を3回1分59秒TKOで下して新王者に。5度目の防衛戦となったIBF女子世界ライトフライ級王者、柴田直子(35、ワールドスポーツ)は2-0の判定で、同級2位のマリア・サリナス(27、メキシコ)との再戦に決着をつけた。
セミファイナルは、日本体育大に通う女子大生、古川が、本来の階級より3階級下に減量しての初の世界戦。減量は8キロに及んだが、この1か月半、炭水化物を断ち、「ゲップが出るので量が飲めない」と、炭酸水を水代わりに飲むという涙ぐましい減量を成功させてリングに上がってきた。 一方、北九州から乗り込んだ西村は二児のママ。朝、ランニングを終えると、朝ご飯を用意して2人の子供を小学校と保育園へ送り出して、そこから洗濯、掃除。それを終えると筋トレ。子供達が帰ってくるのを出迎えると、買い物をしてからジムワーク。ジムから帰ると家族の夕食の準備である。ジムの会長が夫というボクシング一家だが、ママとボクサーの二刀流を「楽しい」と、二度目の世界戦を迎えた。 試合は、古川が若さとパワーで強引に攻めるが、西村はテクニックで応戦。インサイドからパンチを返して古川の勢いに激しく抵抗した。だが、3回に古川の右のストレートがヒットすると、西村は崩れるようにして倒れ、そのまましばらく動けないほどの女子にしては珍しい鮮烈なTKO劇となった。 「負けたらスキンヘッドになれ!と言われていたので勝ててよかった(笑)。1ラウンドからいいのが当たったけれど、西村さんがパンチを返してくるのでまとめきれなかった。倒したパンチには一番手ごたえがあったかな。チャンピオンになれたので、これから雲の上だった人たちと試合ができるかもしれない。それが楽しみ」と、甲高い声が喜びを表現。減量については「不安はあったが、計量後にご飯を食べて4キロ体重が戻ると元気になった」と、周囲を笑わせた。 テクニックとスピードで勝負する女子の世界王者が多い中、古川のようなハードパンチャーは、貴重な存在。予定されていた前王者、宮尾綾香(大橋)との指名試合は回避される予定だが、今後のVロードが楽しみなボクサーである。