高校生が“社長”で“株主” 長野商業で100年続く模擬デパート
長野県で100年近く続く高校生の実習販売「長商デパート」が28日から3日間の日程で県立長野商業高校(長野市)で始まりました。長商デパートは生徒が出資して設立した模擬株式会社が売り出しを行い、売り上げは毎年3000万円前後を達成。株主の生徒に配当します。売り出しは授業の一環で地域住民にも親しまれ、初日からにぎわっています。
入学と同時に全生徒が500円を出資
長商デパートは毎日午前10時から午後4時まで同校の体育館や教室などを会場に開店。昨年は3日間で1万8000人の長野市民らが訪れましたが、今回も初日の昼までに1400人近い来場者で好調な出足。魚、野菜、菓子、衣料品など多くの商品を販売し、生徒が売り声を張り上げていました。 長野商業高校は1900(明治33)年創立の長野市立商業学校が前身。同校によると1902年に行われた物品販売が最初の実習販売で、1908年には1府10県の連合共進会に50日間、実習販売店を開き、6万人余の来客と当時で1326円余の総売り上げを記録しました。 戦争で8年間中断したものの今年で92回目を迎え、現在の「模擬株式会社長商デパート」の組織の設立は1951(昭和26)年から。戦後ということもあり、新しい商業教育を目指す狙いがありました。 全生徒が入学と同時に500円を出資、売り上げが順調だと毎年50円の配当があります。卒業時には3年間の配当を含め650円を受け取ることに。売り上げが振るわず配当がない年も1年ありましたが、その時の“株主”の卒業時の出資金と配当の受け取り額は600円でした。 取締役会は3年生の取締役10人と、オブザーバーの立場の2年生の取締役補佐で開き、社長を選出。3月の株主総会で社長交代人事が行われます。
販売だけでなく清掃や駐車場管理も「授業」
伝統の長商デパートは受験生の関心も高く、同校の宮原明和・教頭の話だと「長商デパートを運営したいからと志願する生徒もいます。社長になりたいと希望して入学し、実際に社長になった生徒もいました」。 しかし、長商デパートは単なるイベントではなく、教育の一環。生徒たちの取り組みは学習の評価対象になります。物品の仕入れや販売、客との応対など直接「営業」とかかわる分野にとどまらず、期間中のごみを収集する係やトイレ掃除、駐車場の管理などさまざまな仕事がそのまま授業になります。 模擬株式会社長商デパートの代表取締役社長、3年生の酒井紫帆さんは「お客さんの応対のときだけでなく、常に身だしなみなどに気を配ることが大切。土、日曜日はさらに多くの人が訪れるので、少し緊張します」と話していました。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説