<児童ポルノ法>改正案で結局どう変わる? 単純所持も「禁止」
過去のアイドル写真集もNG?
たとえば、日弁連は「自分の子どもの乳幼児時代の裸の写真でも該当すると判断されるおそれがある」と指摘し、さらに18歳未満のアイドルのきわどい水着写真が掲載されている雑誌や写真集を持っているだけで逮捕されてしまうのでは、と心配する人もいます。映画でも、大林宣彦監督の「転校生」などには18歳未満の女優のヌードシーンが出てきます。こうしたビデオを持っていても児童ポルノの単純所持に該当する可能性があるとの見方もあります。 もっとも、改正案には注意事項として「(性的虐待から児童を守るという)本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない」という一文もあります。捜査権の乱用はしませんと言うのですが、児童ポルノの単純所持を禁じている諸外国では前述のようなケースで逮捕された人たちがいるのも事実です。米国では2003年、入浴中の子どもを撮影した写真が児童ポルノと判断され、子どもの母親と恋人が単純所持で逮捕、20年以下の懲役を求刑されるという事件が起きているのです。
漫画・アニメとの関連性調査が検討事項に
「単純所持の禁止」のほかにも大きなポイントがあります。今回は規制の対象から外したものの、政府は改正案に、法律の施行後3年をめどに漫画やアニメなどと児童に対する性的虐待との関連性を調べることも検討事項として入れています。漫画やアニメが児童への性的虐待に影響しているかどうか、政府が調査するというわけです。しかし、漫画やアニメが児童ポルノにあたるなら、しずかちゃんの入浴シーンが描かれた「ドラえもん」の漫画を持っていても処罰されることになりかねません。そもそも「表現の自由」を侵害するという意見もあります。児童を性的虐待から守るのはもちろん必要なことですが、政府にはこの法律を通じて漫画やアニメの規制を強化したいとの狙いもあるといわれます。 国会の会期末まで残りわずかとなりましたが、今回の改正案にはまだ議論すべきことがたくさんあります。捜査権の乱用、表現の自由の侵害につながらないように、きちんとした議論をしてもらいたいものです。 (真屋キヨシ/清談社)