軸のブレないGクラスは、尊敬に値するワケとは? 新型メルセデス・ベンツ G450dに悪路で乗った!
あっさりと最高到達点を更新
続いて、絶壁のように見える急な登り坂に挑むマウンテンセクションに移動。ここで、フロント、センター、リアの3つのデフロックスイッチのうち、センターデフだけをロックする。すると、何事もなかったかのように、涼しい顔でG450dは急斜面を完登した。 登り終えてから、スタッフにおもしろいエピソードを聞く。この日は、オフロード試乗の3日目で、2日間の酷使で路面が掘られてしまったからセンターデフをロックしたけれど、初日はデフロックの必要はまったくなかったという。 デフロックなしでこの坂を登れるのなら、もし3つのデフロックを駆使したら、どんな急斜面を登ることができるのだろう……。と、いっても答は簡単で、Gクラスより先に、人間の限界が来るのは間違いない。 それほどタフではないオフロードが続く林道コースを走りながら感じるのは、乗り心地のよさ。「あれ、Gクラスってこんなに乗り心地がよかったっけ?」と、試乗を終えてから資料をチェックして納得した。従来型G400dではオプションだったアダプティブダンピングシステムが、標準装備されるようになったのだ。 路面状況や走り方に応じて、快適性と安定性を最適化するこのシステムの効果は絶大で、おそらくオンロードでも乗り心地がよくなっていると推察する。 6年前、デビューしたばかりのGクラスを同じコースで試乗したときには、もうこれ以上オフロード性能を引き上げることは難しいだろうと感じた。けれども6年の間に電動化やシャシーの電子制御技術が進んで、あっさりと最高到達点を更新してしまった。 世の中のGクラスのほとんどが、一度もオフロードを経験せずに生涯を終えるのかもしれない。 あまりクルマに詳しくないGクラスのオーナーが、ディーラーのスタッフにデフロックスイッチの意味を尋ねたら、「このスイッチを押すと壊れるから、絶対に触らないでください」と、言われたという笑い話もある。 でも、自身がどれだけすごいクルマに乗っているのか、一度でいいからオフロードを走ってほしいと思う。 どれだけ高級SUVが増えようが軸のブレないGクラスは、尊敬に値する。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)