『燃えよデブゴン』『プロジェクトA』『五福星』のサモ・ハンが来日!「武術のエッセンスは世界一」と香港映画について語る
10月30日から11月1日までの3日間、東京国際映画祭と併催された「TIFFCOM(映像コンテンツマーケット)」では、香港パビリオンが初出展。10月31日には、イベント「Hong Kong Films @ Tokyo 2024」の中で、パネルディスカッション「カンフー映画の過去、現在、そして未来:伝統の探求と未来への展望」が行われ、来日したサモ・ハン(俳優、武術家、アクション振付師、映画プロデューサー、映画監督)、倉田保昭(俳優、武術家)、谷垣健治(映画監督、アクション監督)が登壇した。 【写真を見る】サモ・ハン、倉田保昭、谷垣健治が鼎談!イベントには300人を超える人々が来場した 数々の香港映画を紹介するとともに、多彩な企画を通じて香港映画の創造性を披露し、業界間の交流や協力の促進を目指す同イベント。パネルディスカッションでは、著名なアクション映画監督&俳優の3人が登壇し、作品の舞台裏や、“絶対に観てほしい作品”などについて語った。 『プロジェクトA』(84)や『五福星』(84)に出演し、ジャッキー・チェンらと香港映画界を盛り上げてきたサモ・ハンは、映画に出演し始めた頃を回顧。「最初は京劇(中国の伝統的な古典演劇)からやって、そこから映画に入っていきました。さまざまな師匠に育てていただき、アクションを学んで。ボクシングなど西洋の武術もやりました。先生からは、『お金を払えば教えてあげる』と言われていたのでお金を払って、でも楽しみながら、さまざまなことを学んでいったんです。アクション俳優は“生涯をかけてやる天職”だと思っていましたから。最初は京劇しかわからなかったけれど、いろいろなところから、例えば漫画などからも『こんな動きがあるのか』と学んで。その頃、多くの俳優たちも私と同様に学んでいました。努力だけは裏切りません」と振り返った。 一方、日本では2025年1月17日(金)に公開予定の映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』でアクション監督を務めている谷垣が、「僕は、倉田さん主宰の倉田アクションクラブでアクションの基本を身に着けました。香港映画が大好きな子どもとして育ったので。いま仕事するうえでも、武術は大事なツールになっています」とコメント。自身は1970年生まれだそうで「子どもの頃は、学校でも『酔拳』などが話題になっていて。映画館に行けばそうした香港映画、カンフー映画が観られて幸せでした」と、若かりし頃を懐かしんだ。 さらに倉田は、「私は1969年、俳優としてちょい役しか仕事がなかった頃、『香港映画のオーディションを受けないか』と言われて。その時は『香港に映画なんかないだろう』と思っていたので、怪しい話だと思ったのですが。でも、日本にいたって芽も出ないし。一応受けてみたら、オーディションではなくて挨拶をしただけで…その後、『お前に決まったらしい。香港に2週間行ってこい』と言われたのですが、現地で殺されるんじゃないかと思っていました(笑)」と、香港映画に出演し始めた頃のエピソードを語ってニヤリ。 続けて「親から3万円借金して行ったのですが、2週間の内、撮ったのはたったの1日だけ。その1日で、会社から呼ばれて『お前は売れないわけがない。うちと長期契約しよう』と言われて。驚いて、年間契約は一旦断ったのですが、そこから1本1本出るようになりました。香港がなかったら、いまの私はないですね。俳優生活もない。すべては香港のおかげです」と、感謝の言葉を口にしていた。 また、香港映画については、「海外に行っても影響を感じる。どの国にもあるチャイナタウンみたいなもので、どこへ行っても影響を感じます」と谷垣。倉田は、「香港で初めて撮影して『スゴイな』とビックリしたのは、スタントマン、武術指導、殺陣師が100人くらいいて、心を1つにして命がけで撮影していたこと。それこそが、今でも世界に轟いている“香港アクション”なんじゃないかなと思う。今のハリウッド映画、韓国映画でも、そうした香港映画のベースが入っている。最初は失礼な話、『この人たちはなんでこんなにアクションばっかりしているんだろう』と思いましたけど(笑)。私は『2~3回くらいやればいいんじゃないの?』と思っていたのですが、30~60テイクくらい撮って。編集でごまかしたりせず、アクションは徹底していましたね」と、その特徴を解説した。 そしてサモ・ハンは、「香港映画の武術のエッセンスは、全世界においてもトップ。カンフー映画については、なかなか映画賞などには反映されませんでしたが、最近ではベストアクション賞といった部門も新設されるなど、武術家や制作者たちも報われるようになってきました。中国で伝承してきたものを伝えようと、フィルムメーカーも、指導を担当されている武術家の方々も一生懸命。リスペクトされないといけないと思います」と真摯に語っていた。 取材・文/平井あゆみ