金星探査が「地球型」太陽系外惑星を理解する鍵に
第2次世界大戦中の英国を主導したウィンストン・チャーチル元首相の言葉を借りれば、地球の姉妹惑星である金星は、依然として不可解で、謎に満ち、神秘に包まれているという。大きさ、質量、内部構造が驚くほど似ている地球と金星は今日、似ても似つかない環境にある。地球は生態学的な楽園である一方、金星は荒廃した惑星の代名詞になっている。 【画像】NASAのマリナー10号探査機が撮影した金星の写真など 金星は単に、形成された場所が進化の最中にある黄色矮星の太陽に近すぎたため、表面に液体の水を維持することができなかった、というのが従来の見方だ。だが、ここ数十年の間に、こうした見方は短絡的すぎると見なされるようになっている。この説明では、次の疑問に適切に答えることができないからだ。なぜ金星は、鉛を溶かすほど高温の表面温度と、地球の90倍にも達する表面大気圧を持つようになったのか。 それでも金星は、地球程度の質量を持つ地球型太陽系外惑星を理解する上で極めて重要であることに変わりはないと、専門誌Nature Astronomyに掲載された最新論文の執筆者らは主張している。 金星は、宇宙生物学上の教訓となる。なぜなら、一見したところ生命存在が可能と思われる地球質量の系外惑星を観測すると、非生物的な酸素が豊富という結果が得られるにすぎない可能性があるからだ。つまり、生命とは無関係の酸素が、この惑星の表面に存在するわけだ。 1970年代末、米航空宇宙局(NASA)のパイオニア・ビーナス計画の金星周回探査機が、海水の総量に相当する水の壊滅的な脱ガスが起きたことを示す証拠を検出した。もし異星人の天文学者が太陽系の方向を観測していたら、この脱ガスで生成された非生物的酸素を容易に確認できただろう。あくまで推測の域を出ないことだが、酸素が豊富と推定されるという理由で、当時の太陽系の金星を生命存在可能と誤解した地球外知的文明もあったかもしれない。 こうしたシナリオは、特定の系外惑星に生命が存在する可能性があると確信を持って主張することがどれほど難しいかを浮き彫りにするだけだ。