開始1時間前に「まさか…」 神村学園の二刀流が躍動 センバツ
◇センバツ高校野球1回戦(22日、甲子園) ◇○神村学園(鹿児島)6―3作新学院(栃木)● 【熱戦を写真で振り返る】神村学園vs作新学院(1回戦) 先発を告げられたのは試合開始1時間前だった。昨秋の公式戦で登板のなかった神村学園の背番号「7」の左腕・上川床勇希は「まさか……」と驚きながらも、憧れのマウンドに上がる喜びが勝った。約1年ぶりの公式戦登板で躍動し、強豪の作新学院を相手に六回途中2失点に抑え、勝利を呼び込んだ。 100キロ台の緩いカーブが有効だった。序盤は直球を中心に攻めたが、バッテリーは「狙われている」と配球を変え、相手打線を惑わせた。 三回には無死満塁のピンチから2死を奪い、5番・柳沼翔を迎えた。カーブを3球続けて追い込み、最後は力強い腕の振りから131キロの外角直球で空振り三振を奪うと、派手なガッツポーズを作ってベンチに戻った。六回に連打を浴びて失点を許したが十分に先発の役割を果たし、左翼のポジションについた。 もちろん投げるだけではない。昨夏の甲子園で主力打者の一人として4強入りに貢献した打力も光った。2点リードの五回の第3打席では右前打で出塁し、貴重な追加点のホームを踏んだ。 高校入学当時は投手だった。だが、非凡な打撃センスを買われて野手との二刀流に。昨夏の鹿児島大会中に中指を故障した影響で投げる機会はなかった。甲子園の外野を守りながら「いつか、自分も」という思いを抱き、指が完治した今年から投球練習を始め、念願のマウンドを勝ち取った。 打って投げての大活躍。試合後に「投手と野手、どっちがやりたいですか?」と問われると、「どっちもしたい。欲張りなんで」とにんまりと笑みを浮かべながら答え、「チームのために投げて、打撃でも貢献したい」とフル回転を誓った。【村上正】