『猿の惑星』監督、“良い悪役の極意”を語る 「ただ“悪”を追求するだけでは面白くない」
■『猿の惑星/キングダム』に込めた思い
ボール:リアルのロケ地にいるのが好きなんです。現実のものがそこにあることが、撮影部や役者、僕の助けになります。指の間に土が入ったり、日が落ちるから早く撮らなきゃいけなかったりと、ロケーション撮影をすることでエネルギーが生まれるんです。バーチャルな映画だからこそリアルに感じてもらうことがすごく大切でした。35分間くらいは100%CGIを使ったシーンもあるのですが、それに全く気付かないくらい没入して見てほしいなと思っています。虫や草、木々も全部CGIだったシーンもあるんですよ。 ーー全く気付かなかったです(笑)。豊かな自然が登場する一方で、人工物であるショッピングモールのシーンもワクワクしました。 ボール:人間界の残滓(ざんし)が朽ちていき、今の世界のどこか美しい風景になっている。でもそんな中で、当時の記憶を感じるような不思議さや怖さもあるシーンでしたね。 ーー『猿の惑星:新世紀(ライジング)』の戦車から360度見渡すシーンは、マット・リーヴス監督のOKが出るまで、1030ものバージョンを重ねたとか。本作でもそれくらいの修正を重ねたのでしょうか? ボール:カットによっては完成まで1年かかっているものもあります。撮影から作業を重ねていくごとにバージョンの番号が更新されていくので、どれくらいの番号にまでなったかは覚えていないけれど、1000を超えることもあったかもしれません。僕から差し戻しを繰り返したと言うよりかは、完成までの作業を踏まえるとそれくらいの数字にはなり得ます。 ーー猿たちの目がとても印象的で、役者さんの演技はもちろんのこと、どの程度光を入れるかなどVFXの力を感じさせる部分でした。 ボール:とてもこだわったところなのでうれしいです。猿たちの目はCGIでできています。撮影の時に実際に役者の目にどういった光が当たっていたかや細かい動きをCGIで再現するんです。 ーーアナヤの目が特に好きでした。 ボール:アナヤは気に入ってくれた方がとても多いです。でも不思議なことに、今回の作品では皆さんが好きなキャラクターが分かれていました。いろんな人がいろんなキャラクターを好きになってくれたんですよね。 ーーきっと選べないでしょうけど監督は…? ボール:そうですね(笑)。あえて選ぶならノアかな。 ーーありがとうございます。本作はとても続きが気になる終わり方をします。現実の問題を考えさせる『猿の惑星』シリーズにおいて、監督が2024年の今に公開されるからこそ込めたかった思いはありますか? ボール:ファンタジーではあるけれども、真実とは何なのか、自分と意見が違う人とどういう風に接したら良いのか、また技術への依存など現実的な問題を反映している作品でもあります。面白い映画や素晴らしい映画は、考えさせてくれるものだと思っているので、そういった部分も観客たちには響いてほしいです。 (取材・文・写真:阿部桜子) 映画『猿の惑星/キングダム』は現在公開中。