享栄初戦敗退 大藤監督、教え子が作り上げた名古屋たちばなのチーム力の高さに脱帽【24年夏・愛知大会」
<第106回 全国高等学校野球選手権 愛知大会 Fブロック:名古屋たちばな 2-1 享栄>14日◇3回戦◇岡崎レッドダイヤモンド球場 【トーナメント表】夏の愛知大会 14日までの結果 6月末に開幕して、週末ごとに試合が行われてきた愛知大会。全国最多の181校173チームが参加していたが、既に64校に絞られて3回戦の戦いとなる。ここからは、春季県大会でベスト8に勝ち残ったシード校も登場する。 今大会は、シード校の初戦の相手が実力校という好カードが多くなっている。この日の、岡崎RDスタジアムの試合もそんなカードが相次ぐこととなった。春季大会優勝校の享栄も初戦を迎えるのだが、愛知産大工から共学化に伴って校名変更した名古屋たちばなが相手となった。 愛知産大工時代には、コロナ禍で中止となって県独自大会が開催された2020年に準優勝を果たしているなどの実績を誇っている。また、鈴木 将吾監督は享栄の大藤 敏行監督の中京大中京時代の教え子でもある。そんな因縁もある顔合わせとなった。 鈴木監督は、「とにかく、愛知県で勝っていくには4強を自力でやっつけないといかん。だから、ウチはチャレンジャーですから、思い切ってぶつかるだけ」ということを常に選手たちにも言っている。この試合も、そんな思いで名古屋たちばなは強豪にぶつかっていった。そんな意識で、初回先頭の田ノ上 海空選手(3年)が二塁打するが、ここは得点に結びつかなかった。 その裏、享栄は先頭のパウエル キヌア選手(3年)が四球で出ると、盗塁と悪送球で三塁へ進み、四球もあって一死一三塁となったところで、4番・西久保 颯選手(3年)が中前打して先制。名古屋たちばなの先発・三浦 大輝投手(3年)もちょっと落ち着かないうちに失った1点という感じだった。しかし、以降は丁寧にコーナーを突いて打たせて取っていく持ち味の投球となった。 享栄の先発は長身左腕・小山 隼和投手(2年)で、回転のいいボールを投げ込んでいっていた。しかし、反撃したい名古屋たちばなは食い下がって5回、二死二塁からチームで最もシュアな打者とも言われている田ノ上選手が三遊間を破って二塁走者を帰して同点となった。 こうして同点のまま後半に突入していく展開となった。享栄のマウンドは、6回からは濱上 琉碧投手(3年)となった。1点を争う展開でもあり、次のアクションがどうなるのかというところだったが、7回に試合が動いた。 名古屋たちばなは先頭の5番・田中 脩夢選手(3年)が左前打で出ると、勝負を賭けた鈴木監督は代走に1年生の深田 桜生選手を送り出す。起用に応えて、すかさず二盗を決めると、バントで進めて一死三塁。ここで、名古屋たちばなは7番・水野 迅選手(3年)がスクイズを決める。結果的にはこれが決勝点となるのだが、ファーストストライクをきちんと転がした見事なバントだった。 名古屋たちばなは継投で交わしていくチームなのだが、4回途中からは左腕・中島 稜太投手(2年)、8回からは同じく左腕の丹下 翔真投手(3年)が8回は走者を出しつつも、何とか踏ん張り、9回は3人で抑えて最少得点差をキープして逃げ切った。 名古屋たちばな鈴木監督は、「1年生の深田を代走に送ったけれども、それが盗塁を決めて上級生たちにも勇気を与えた。あれは大きかった。継投は最初から考えていたのだけれども、それぞれがよく投げてくれた。最後は3年生の丹下の気持ちに賭けたところもあったけれども、よく応えてくれた」と、恩師への恩返しができた戦いを振り返った。 享栄の大藤監督は、「負ける展開とは、こう言うもんだわ。相手の投手はいずれもよかった。去年秋も教え子(豊橋中央・萩本監督)に負けたんだけれども、この夏も教え子にやられた。だけど、いいチームを作ってきている」と、2009年夏には中京大中京で全国制覇を果たしている名将は、教え子の作り上げてきたチームに脱帽していた。