【ポスト・高倉健?】『碁盤斬り』草彅剛がダース・ベイダーのような“黒“に反転。日本代表とも評される天賦の才とは?
劇作家の故・つかこうへいは、草彅剛のことを“大天才”と呼んだ。「静かなたたずまいの身中には秘やかにケモノが眠る」と評して、その比類なき演技力を絶賛。 【写真】草彅剛のダークサイド!? 狂気が滲む鬼の形相 演出家の河原雅彦は「天賦の才」、脚本家の三谷幸喜は「天衣無縫」、そして脚本家の坂元裕二は「もし俳優の五輪があったら、日本代表は草彅さんです」と語っている。トップ・クリエイターたちが認める才能、それが草彅剛なのだ。
どんな色にも染まる天才俳優・草彅剛
スポンジのような吸収力。ナチュラルな佇まい。トップアイドルとして芸能界の最前線で活躍してきた彼は、芝居となればスターとしての自分を覆い隠して、無色透明な存在に変化(へんげ)し、どんな色にも染まっていく。まるで真っ白なキャンバスのように。 『黄泉がえり』(2003年)では生真面目な青年、『BALLAD 名もなき恋のうた』(2009年)では一騎当千の強者、『ミッドナイトスワン』(2020年)では葛藤を抱えるトランスジェンダー。草彅剛は役を自分に引き寄せて、その人物を生き切ってしまう。自分の個性をキャラクターに付与するのではなく、自分のなかに新たな個性を生み出すのだ。まさしく“天才”俳優である。 そんな草彅剛の『サバカン SABAKAN』(2022年)以来となる映画作品が、本格時代劇『碁盤斬り』。監督を務めたのは、『凪待ち』(2019年)で香取慎吾とタッグを組んだ経験もある白石和彌。この映画の脚本を書いた加藤正人が大の囲碁ファンで、それを題材にした人情噺「柳田格之進」をやってみたいと言ったことをきっかけに、このプロジェクトが始動した。原案は、囲碁にまつわる古典落語なのである。 娘のお絹(清原果耶)と二人で長屋で住んでいる、貧乏浪人の柳田格之進。ある日、豪商の萬屋源兵衛(國村隼)と碁に興じていると、五十両が紛失する事件が発生。その場に居合わせた格之進が濡れ衣を着せられてしまう…という物語。そしてこの映画には、仇討ちという落語にはないオリジナル・ストーリーも組み込まれている。 本作は、古典落語の人情噺に血生臭い復讐譚をミックスした、<リベンジ・エンタテイメント>なのだ。