県所蔵の贋作疑い油彩画、購入前の意見書公開…「画家の初期代表作」「市場に出るのは稀」評価高く
徳島県立近代美術館(徳島市)が所蔵する油彩画「自転車乗り」に贋作(がんさく)の疑いがある問題で、研究者の鑑定書や作風などから、フランス人画家ジャン・メッツァンジェ(1883~1956年)の初期代表作と判断されていたことが県への情報公開請求で明らかになった。1900年代初頭の作品が市場に出ることは稀(まれ)であるとし、価値を高く評価していた。(荒川紘太)
メッツァンジェは20世紀初めにフランスでピカソらによって興った美術運動「キュビスム」の画家として知られる。自転車乗りは1999年、大阪市の画廊から6720万円で購入している。
同館長の諮問機関「資料収集委員会」が98年に作成した「美術品等評価意見書」などによると、研究者の鑑定書や作風、絵にサインがあることから、11~12年に描かれた本物と判断。鑑定書にはメッツァンジェの作品目録に自転車乗りが掲載予定とする記述があり、さらに鑑定書が本物とする証明書もあった。
また、メッツァンジェをキュビスムの代表的な画家として評価。自転車乗りは「透明感ある色彩や躍動感ある動きの表現力に優れた初期の代表作」とし、同館が所蔵するレジェやピカソの作品と合わせて展示することが「非常に効果的」としていた。
作者や作品の高い評価を理由に、購入価格も妥当だとして、県教育委員会に絵の購入を求めている。
作品を巡っては、6月上旬に国際的な贋作師ウォルフガング・ベルトラッキ作による偽物である可能性があるとの情報提供が同館に寄せられた。7月にはベルトラッキ側が、読売新聞の取材に対して「私が描いた作品だ」と認めた。
同館は購入元に問い合わせるなどして真贋の調査を進めており、竹内利夫課長は「購入のプロセスに問題はなかったと考えている。今後、科学的な調査を行い、総合的に真贋を判断したい」と話した。