「余計なご飯を食べたくない」都心の若者がシーシャで「チル」する「ほんとうの理由」
渋谷TSUTAYAがシェアラウンジに
「TSUTAYA」のカルチュア・コンビニエンス・クラブがいま、力を入れているのがこの「シェアラウンジ」事業だ。2021年から展開をスタートした時間制で利用できるカフェラウンジで、渋谷以外にも都内や他地域まで着々と店舗を増やしている。 ここではドリンクやお菓子、軽食などがフリー。広々としたイスやテーブルが配置され、設置された雑誌や本も自由に閲覧可能。従来のカフェのように注文したドリンクやフードに対して対価を払うのではなく、1時間1650円~と時間制を導入している。店内では仕事や読書、おしゃべりなどそれぞれの目的で利用されており、コーヒー1杯だけでもいいし(極端な話、何も飲食しなくてもよい)、用意されているドリンクやフードをいろいろと楽しむのもアリだ。 「シェアラウンジ」は何を食べるか何を飲むか、ではなくどう時間を過ごすかにフォーカスしたビジネスモデルであり、いわゆるモノ消費、コト消費ではなく、トキ消費やイミ消費へ価値観が移行していることの表れだろう。
“その場にいられる”安心感
「シェアラウンジ」と同様に、こうしたニーズのスキマに入ってきているのがシーシャだろう。シーシャカフェ、シーシャバーは、表向きはシーシャを売っているが、実際にはシーシャを吸いながらリラックスして過ごす時間に価値を見出したお客が訪れている。 シーシャは煙を吸うための器具を立ち上げるまでに10~20分がかかり、吸い終わりまでたっぷり1時間半ほどかかるため、友だちとおしゃべりを楽しむには十分な時間が確保されている。グラスが空になったら気を使ってドリンクをオーダーしなくてはならない居酒屋とは異なる。無理やり追加オーダーをしなくても気兼ねなく“その場にいられる”安心感がシーシャの魅力だ。また、シーシャ好きによると「会話の中で沈黙が訪れても、煙を吸う行為を挟むので気まずくない」という意見もあった。そういったことからも場所に居心地の良さをプラスしている。 日本、特に東京の飲食店の数は世界でも群を抜いて多いと言われている。しかし、いま街に足りないのは食事を目的とした場所ではなく“落ちついて座れる場所”ではないだろうか。シーシャであったり「シェアラウンジ」であったり、飲食店とは異なるかたちの“座れる場所”があれば、そこに人が集まりそうだ。
大関 愛美(フードスタジアム編集長)