桜島の観測坑道に焼酎を貯蔵したらどうなるのだろう?味は?香りは?鹿児島ならではの実証実験は官民一体で始まる
鹿児島県産芋焼酎を桜島の観測坑道に貯蔵する実証実験が12日、始まった。温度や湿度が一定に保たれ、噴火時に揺れが生じる環境下で保管することにより、味や香りといった酒質に変化が表れるのか調べる。南岳斜面にある有村観測坑道を活用し、県内13蔵元が14銘柄を提供する。 【写真】焼酎を坑道内の貯蔵ケースに入れる蔵元の代表者ら=12日午前、鹿児島市の桜島有村観測坑道
本格焼酎など日本の「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録される見通しとなる中、活火山と共生する鹿児島ならではの取り組みに、酒造関係者らは「絶好のタイミングでのスタート。焼酎の新たな魅力づくりにつなげたい」と期待する。 実証実験は、県酒造組合と鹿児島大学、国土交通省大隅河川国道事務所、県が連携する。坑道は、砂防工事従事者の安全確保のほか、噴火予測のため傾斜計や伸縮計を置き山体変化を観測している。管理する同事務所によると、気温19度程度、湿度94~95%で年間を通し変化が少ない。 13蔵元は1年間に一升瓶を24本ずつ貯蔵、1年ごとに瓶を入れ替えながら3年間続ける。県工業技術センター(霧島市)でも同じ銘柄を1本ずつ保管し、同センターと鹿大が酒質を比較する。同組合によると、一般販売はせず、桜島をPRするイベントなどで振る舞う予定という。 12日は現地で入坑式があり関係者約50人が参加。各蔵元の代表が最後の1本を坑道内のケースに入れた。同組合の田中完専務理事は「焼酎を育む鹿児島の気候風土と関連付けて、海外に売り込むチャンスにしたい」、鹿大焼酎・発酵学教育研究センターの高峯和則教授(60)は「安定的な貯蔵条件に加えて、火山活動がどのように酒質へ影響するのか楽しみ」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島