共産党「核抑止論の誤りを一貫批判」と衆院選の支持呼びかけ ソ連核擁護の過去と矛盾鮮明
共産党機関紙「しんぶん赤旗」は17日付紙面で「『核兵器のない世界』と日本共産党の役割」と題した緒方靖夫副委員長の論文を掲載。「核抑止論の誤りを一貫して批判」として、衆院選での支持拡大を呼び掛けた。共産党は米国に対抗するためとしてソ連の核を擁護した時期がある。昨年発行された党史でも誤りを認めており、矛盾が浮き彫りとなっている。 ■「核兵器廃絶を訴え続けてきた」 緒方氏の論文は、日本原水爆被害者団体協議会（日本被団協）のノーベル平和賞受賞決定に触れた上で、「『核兵器のない世界』を実現する最大の障害となっているのが核抑止論です。日本共産党は、その誤りを一貫して批判してきました」「被爆国の政党として、戦後一貫して核兵器廃絶のために力を尽くしてきました」とし、平成22年以降の党の活動を紹介。 「戦後一貫して、被爆者の方々とともに核兵器廃絶を訴え、行動を続けてきた日本共産党への一票こそ、『核兵器のない世界』への一番の力になる―このことを大いに訴え広げようではありませんか」と結んでいる。 ■党史で「誤った見方でした」 共産党は昭和36年9月9日付の「アカハタ」号外で野坂参三議長（当時）が「たとえ『死の灰』の危険があっても、核実験の再開という非常手段に訴えるのはやむを得ない」とソ連の核を擁護。理論誌「前衛」の37年10月号で上田耕一郎氏（後の副委員長）が「極度に侵略的な戦略を完成しようとする米国の核実験に対して、ソ連が防衛のための核実験を行うことは当然であり、世界大戦の勃発を阻止するための不可欠の措置にほかならない」と米国に対する核抑止論を展開していた。 こうした主張によって原水爆禁止運動は、共産党系の原水爆禁止日本協議会（原水協）と「いかなる国の核にも反対」とする旧社会党・総評系の原水爆禁止日本国民会議（原水禁）に分裂したままだ。 党は最近になって過去の誤りを認め、党史「日本共産党の百年」で「党として、核兵器使用の脅迫によって国の安全を確保するという『核抑止力』論にたいする批判的認識が明瞭でなく、ソ連覇権主義にたいする全面的な批判的認識を確立していないもとでの誤った見方でした」などと記述しており、「一貫して批判してきた」という主張は相反している。（渡辺浩）
