「昭和のおっさん」主人公のドラマが話題、あの頃への懐古&羨望と同時に起こる若年層からの“異物感”と“可愛さ”
「昭和のおっさん」と言えば、「おっさん構文」がバカにされているように、ダサい、ウザい、キモいなどといったネガティブなイメージがつきまとう。だが今期は『不適切にもほどがある!』(TBS系)、『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(東海テレビ・フジテレビ系)と、なぜか2本も「昭和のおっさん」を主人公にしたドラマが放送されている。基本、女性をメインターゲットにすえているドラマ業界において、なぜ「昭和のおっさん」が複数ピックアップされているのか? 【漫画】「ゲイがうつる」「嫁に行きそびれる」…NG発言を連発の昭和のおっさんが“ある一言”で変化?
■“若年層とのズレ”をコミカルに描くと同時に、現代のおっさんたちにコンプラを啓蒙
『不適切にもほどがある!(以下、ふてほど)』は阿部サダヲ演じる昭和のダメなおっさんが、コンプライアンスでがんじがらめになってしまっている今の社会にタイムスリップし、令和と昭和のダメな部分といい部分を痛快に斬っていくドラマ。若い世代からも「昭和やばい」「この頃楽しそう」と賛否両論の声で盛り上がっている。 一方で『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!(以下、おっパン)』(原作:練馬ジム/LINEマンガ)は、原田泰造が演じる主人公が令和の日本において自身の価値観をアップデートさせていくというストーリー。主人公がある出会いをきっかけに、若者を理解できず、昭和の凝り固まった考え方を持つ自身を変えていこうと奮闘していくドラマだ。 「それぞれ独立した描き方、主題のあるドラマですが、どちらにも“高齢層への啓蒙・啓発”というテーマが潜んでいる」と語るのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「誤解を恐れずに言えば、エンタメの多様化により、テレビドラマを観る層は高齢層がメインになっているのが現状です。これは“あの頃”への懐古と羨望を促すのはもちろん、“世間(若年層)とのズレ”をコミカルに描くと同時に、おっさんにコンプラを啓蒙することにもなっているように感じます」(衣輪氏) 衣輪氏によれば、この流れは「第二次おっさんアップデートブーム」だという。第一次はバブル~バブル崩壊時代。「トレンディドラマ」が生まれた時代で、昔の価値観はださい、古いとされ、バブル世代、団塊Jr.世代による若者至上主義が台頭。例えば、アダルトチームとヤングチームに分かれた芸能人がそれぞれ知らないだろう時代性のある問題を交互に回答し、常識の違いを楽しむ『クイズ!年の差なんて』が放送され、最高視聴率28.4%(ビデオリサーチ社調べ)を記録する大人気番組に。ほか、とんねるずやダウンタウンがスターとなり、縦社会が当然と思われた芸能界において、先輩や大御所など地位のある芸能人を恐れず斬りまくり、これが拍手喝采を浴びた。 そして現代。この「第一次おっさんアップデートブーム」を楽しんだバブル世代、団塊Jr.世代にあたる先述の2本のドラマの主人公が、逆に令和との世代間ギャップを浮かび上がらせるコマとして揶揄されている。なんとも皮肉な話だ。