「ユース、ジュニアユースの選択もあったんですけど…」

功労選手賞を受賞した中村俊輔氏（左から２人目）。写真：滝川敏之

　12月５日に横浜アリーナで「2023 Jリーグアウォーズ」が開催され、昨季をもって現役を引退し、現在は横浜FCのコーチを務める中村俊輔氏は、功労選手賞を受賞した。同氏はその後に取材に応じ、指導者としての焦りを率直に明かした。 【画像】セルジオ越後、小野伸二、大久保嘉人、中村憲剛ら28名が厳選した「J歴代ベスト11」を一挙公開！ 　Jリーグ全体を見渡すと、今季まで鹿島アントラーズを率いた岩政大樹氏をはじめ、同世代や年下が続々と監督を務めている。44歳でユニホームを脱ぎ、40代中盤にしてセカンドキャリアを歩み始めた俊輔氏は、コーチデビューしたルーキーイヤーをこう振り返る。 「やっぱなんか難しかったですね。自分より年齢が低い...（重要なのは）年齢じゃないすけど、岩政とかもそうですけど、ああやって監督をやっているなかで自分はまだね、40超えて１年目なので、指導者としての焦りみたいのもあるし。今年A級（ライセンス）を受けに行って、色んなことが刺激になったり。もっといっぱい学べることがあると思うので、その焦りはあります。 　やることがいっぱいあって大変でした。自チーム、ライセンス、学ばなきゃいけないこと。ユース、ジュニアユースの選択もあったんですけど、時間がないからトップじゃなくて、指導者になるんだったらトップしかやっぱり、『現場で早くやってほしい』とも言われたし、やりたいなっていうのはあったので」 　横浜FCはJ１最下位に終わり、無念のJ２降格となった。日本代表の元10番は「スタッフとして降格してしまった経験とか、これは色んな教訓にして、活かしていかなきゃいけない」と力を込め、自分ならではのコーチ像を模索する。 「どっちかっていったら選手寄りで良かったと思うので、色んな声を掛けたりするようには心掛けてましたけど、もっと選手との距離を置いた方が良かったかとか。選手のオーラが出ちゃってないかなとか。服が違うだけで。『お前さ、あの時のトラップさ、こう』っていう、その口調はもう違うのかなと。だけど、プラスなことは、これプラスかなとか、その判断は自分の中ではやっていたりしました。 　以前のようにロッカールームに入り浸って喋ったりはもちろんしないですけど。ロッカールームはやっぱ選手のものだし。グラウンドの中で、手前で若い選手が上手くいってない時に、ちょっとアドバイスしたり。監督とファーストコーチが全体を見ているので、若い選手とかに『こういう方がいいんじゃない？』とか。 　あと１番は、自習練が終わった後とかに、選手時代もそうですけど、座りながらちょっとサッカーの話をしたり。あれは逆に自分しかできないかなと思って、良い方向にメンタルを持っていく。色々したつもりだったんですけど...やっぱ結果が出ないと、プロなので、違ったかなって考えざるを得ない。勝ってたら、あれ良かったなと思いますけど。もっとなんかできなかったかなと」 　名選手、名監督にあらず――。なんて言葉もあるが、その左足で魔法をかけ続けた稀代のファンタジスタは、指導者としても一握りの存在となれるか。 取材・構成●有園僚真（サッカーダイジェストWeb編集部）