谷川じゅんじ「2021年以降も残していけるモノと価値の創造目指す」
「空間をメディアにしたメッセージの伝達」をコンセプトに、デザインやアート、ファッション、商業空間の開発などを手がけるスペースコンポーザーの谷川じゅんじさんは、近年プロダクトデザインや企業・街のブランドコンサルティングのほかに、日本の伝統工芸活性化に注力している。そんな谷川さんに、話を聞いた。
日本のネクストビジョンを世界に発信したい
──2015年の予定は? まずは、2013年から取り組んでいるプロジェクト「MEDIA AMBITION TOKYO」が今年3回目を迎えます。2月11日から5日間、都内5・6カ所で開催する予定です。東京・六本木ヒルズを中心に規模も昨年に比べてさらに拡大して実施します。 「東京と世界と 過去と未来と 技術と芸術が交わる祭典」と唱っているこのプロジェクトは、民間による民間のための全く新しいテクノロジーカルチャーイベントです。世の中の技術やテクノロジーの進化と領域が、ますます可能性を持ち、広がっていると日々感じるなか、都市を舞台にした、テクノロジーやアートが共存共栄する日本のネクストビジョンを世界に向けて発信したいんです。 ある種のムーブメントを起こそうとした結果、集まったメンバー(PerfumeのPVやライブ演出を手がけるライゾマティクスや、海外での評価がここ最近急上昇しているチームラボなど)で始まったこのプロジェクトも、回を重ねる毎にいろいろな方が興味関心を持ってくれています。この調子でもっともっと勢いを付けていければと思っています。
最近考えているのは、日本の「vision2021」
──最近関心のある出来事はなんですか? 最近特に考えているのは、日本の「vision2021」についてです。世の中は2020年の東京五輪に向けて、意識を集中し始めているけれど、我々がもっと考えるべきは、その先の2021年からだと思うんです。2020年に向けて生み出した物は、その先も永続的に使えますか?ということです。 なぜなら、僕らが今2020年に向けて生み出しているものは、次の世代に借金して作っているわけですよね。ということは、後々の人たちのために役に立つものを生み出すべきでしょ。永続性があるか、経年しても美しくあるか。いろんな活動のなかで、持続性のある物と価値を考えていきましょうと言いたい。2020年に生まれた子が、年老いたとき、医療も今以上に進化を遂げているだろうし、きっと22世紀が訪れているでしょう。 5年後の2020年、社会がどうなっているかなんて、ここ最近のスピードからして予想もつかない。目に見える、例えば東京がどうなっているかとかは、だいたい想像できたとしても、社会の仕組みに関してはまったくわからないですよね。昔、僕らが不変だと思っていた事が、いまとても不安定で、この先どうなるかさえわからいですからね。 ──どうしてこうなったんでしょうか? 昔は情報が限られていたけれど、今はネットやソーシャルメディアの発達によって、すべての情報が入ってくる。情報が広がっていく経路が多様化しすぎて、さらに個人の発信力があがったことで全く違った社会が形成されるようになった。即座に情報が世界を駆け巡れるようになって、世の中のしくみが、それについていけてない。それはそれでまた新しい仕組みがどんどん増えて行くんでしょうけど。
地図じゃなくて、コンパスを持つような生き方いいのでは
──これから日本はどうなると思いますか? でも時代や社会がどれだけ変わっても、変わらないものもある。例えば、ヒューマニティーや手業の部分ですね。竹工芸品を元禄元年から作り続けている京都の伝統工芸「竹又」は中川家が代々継承しているものですが、そういう人の血、そして人の知恵みたいなものは、もっともっと大切になっていくと思います。 これからは、一人一人が地図じゃなくて、コンパスみたいなものを持つような生き方になるといいんじゃないかなと僕は思っています。好奇心とか自分のなかの新しい価値みたいなものを、ドンドン受け入れていける人が、これから先の日本を引っ張っていくのではないでしょうか。