目標は「上手い選手になること」。山沢拓也は求道者のごとく己を磨く。
――山沢選手はもともと無口なタイプだと思いますが、埼玉WKはよくコミュニケーションをとるチームです。そこはレベルアップしたのではないですか。 「はい。ラグビー以外では以前と変わりませんが、ラグビーに関しては10番と15番はコミュニケーションが必要なポジションだし、ワイルドナイツのラグビーはコミュニケーションが大事なので、かなり話せるようになったし、ある程度ラグビーも理解できるようになりました」
――新生日本代表の初戦はイングランド代表と対戦します。意気込みを聞かせてください。 「まず代表のラグビーをしっかり理解することが大事です。イングランドのラグビーを理解して対策し、どう勝つかの準備をすると思うので、そこに100%コミットできるようにしていきたいです。今の日本代表は誰が出てもレベルの高いチームだと思います。自分が試合で出る、出ないに関係なく、いろいろな場でチームに貢献できるように役割を果たしたいと思います」
――2022年11月のイングランド代表戦は、山沢選手は10番で出場しました。どんなイメージを持っていますか。 「セットピースで崩されると、日本のやりたいラグビーができません。ディフェンスはものすごく前に出てくるので、そこで受けないことが大事です。しかし、前に出てくるぶん、うまくパスを通せば外側にスペースがあるし、いろいろな場所にスペースができるので、やりようはあると思います」
――2027年のRWCへの出場についての思いを聞かせてください。 「正直、あまり意識していません。そういう舞台を目標にしたことがないのです。目の前のことをしていれば、そこにつながって行くかなという感覚はあります。自分にとっての一番のゴールを言えば、『上手くなりたい』ということです。それを追いかけていますね。日本代表合宿は成長できる環境ですから、どれだけ成長できるかは自分次第だと思っています」
――常に反省を繰り返しているのですね。 「そうですね。反省していないときは、あまり良くないときです。満足しているということなので。フラストレーションを溜めることはどの試合でもあります。その根底にあるのは、上手くなりたい、という気持ちです」
山沢拓也は何度も「上手くなりたい」と言った。昨シーズンのリーグワンでは、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦でトライ、トライ後のゴール、PG、DGというラグビーの得点方法をすべて成功させる「フルハウス」を達成。そのスキルレベルは間違いなく日本のトップレベルだ。それでも、本人はさらに精度の高いプレーを追い求めている。目指す選手像はなく、「自分が思う良い選手」になるべく己を磨き続ける。エディー・ジャパンのなかで山沢はどんな役割を果たしていくのだろう。レベルアップしていく姿が楽しみだ。
村上 晃一