「文句言われるのを恐れてました」…元プラマイ・岩橋良昌が語る「粗品へのアンサー」と「M-1論」
M-1敗者復活で“漫才トランス状態”
吉本興業を契約解除となり、東京・世田谷の豪邸を売りに出してから生活拠点を大阪の田舎の1Kのアパートに移した元「プラス・マイナス」の岩橋良昌(46)。 【初めて見た!】”暴走”で契約解除された元プラ・マイ岩橋の第二の人生 そこに至るまでの苦悩、”月収200万円の売れっ子漫才師”という立場を捨てて得た喜びについては、すでにフライデー本誌およびデジタルの記事「元『プラス・マイナス』岩橋良昌 月収200万円と世田谷の豪邸を捨て「5万円アパート暮らし」の幸せ」で既報の通り。 記事の反響は大きく、「記事が拡散して、知人からたくさん連絡があった」という岩橋に再び話を聞いた。 ーーあらためまして……ゆったりした生活ができていますか。 「芸人時代って、スタジオでテレビカメラを向けられての本番とか、舞台に上がって漫才の本番という、強迫性障害が出やすい緊迫した場面がいっぱいあったんですけど、今こうして大阪の田舎でゆっくりと過ごしてると、精神的衛生上とってもいいですね。 芸人辞めて一番ホッとできた時間て、シャワー浴びてるときやったんです。あたたかいシャワーが染みるってことは相当、心がすさんでましたね。芸人時代はお風呂が面倒くさかったんですけど、シャワーが大好きになっちゃいましたから。 将来的にはもっと田舎に住みたい。広い庭の一軒家を建てて、ゴールデンレトリバーを飼って、絵を描いたりしながら、自分が乗り気になれる仕事をやっていきたい。それで生きていけたら最高ですよね」 ーー12月22日に「M-1グランプリ」決勝が行われます。岩橋さんは正統派の漫才師と言われていましたが、最近のファイナリストたちの漫才をどう見ていますか。 「正統派……野田クリスタルの、『マヂカルラブリー』の漫才を“あれは漫才じゃない”と怒っている人がいましたが、それ自体、意味わからんというか、ナンセンスだなと思います。センターマイクの前で2人でお客さんを笑かしたら、それはもう漫才だろうと僕は思ってますから。 M-1って、型にハマらない漫才が評価される“漫才発明会”みたいな、発表会みたいな感じだと思ってるんですよ。寄席ではできないテレビ芸というか。だから新しいことやってんのに、“漫才じゃない”とか言い出すやつがおるなんて無茶苦茶やなと思いました」 ーーそんな岩橋さんの生涯最高の漫才とは? 「やっぱ、『プラス・マイナス』のM-1ラストイヤー(’18年)のときの敗者復活戦ですかね。やりきったし、“完全に決勝行けた”と思いました。もし決勝に行ってたら、勢いのまま優勝してたんちゃうかって。そうなってたら、まだ僕らおじさんの時代が続いたんじゃないかって。そういう時代の変わり目だったと、僕は勝手に思ってます。あれは関ヶ原の合戦だった、と」 そのときの漫才を岩橋は“漫才トランス状態”、スポーツで言うゾーンのようなものだと説明した。 「もう、自分がどこにいるかもわからないくらい漫才に没頭、100パーセント漫才に集中してる状態。年に数回あるかどうかの“漫才トランス状態”でした。『どうも~』ってマイクの前に出ていったときからワクワクしていて、最初の『視聴者の皆さん、復活させないと殺しますよ』『やりにくなるわ』ってとこから後は、あまり覚えてない。ただただ、楽しいだけ。 いつもだったら『間を外したらウケなくなるよ』とか『ここは声をしっかり張るとこだけど、ちっちゃい声で言っちゃったらウケなくなるよ』『そうすると落ちちゃうよ』みたいな声が天から僕に降ってくるんですが、それが全然なくって。あっという間に3分間が終わった。スコンと抜けた感じ。漫才やってて満足したことはない。毎回、反省の連続なんですけど……あのときは何の後悔もなかった。敗退して気持ちよかったですね、逆に」 ◆粗品からの“エール”へのアンサー ーー吉本興業から契約解除された直後、ニュースを斬りまくっている「霜降り明星」の粗品さん(31)がYouTubeに上げた動画で「岩橋さん、あの人はもうめちゃくちゃおもろい!」「後輩のこんな尖った僕が言うんですから」とエールを送っていました。ご本人の耳には届いてましたか? 「嬉しかったですね。あいつね、ものすごい才能あると思うんですよ。で、才能があるからこそあんだけ叩かれて、才能があるからこそ(批判の声を)ねじ伏せられる。年も離れてて経歴も浅い後輩のことを結構、(明石家)さんまさんが話題にするんですよ。そんな存在って初めてですよ。 言いたいことを言って、それでYouTubeチャンネルはちゃんと回ってる。すごいと思いますね。粗品がおらんかったら、そんな存在、誰一人いないですもんね。いくら根性があったって、リスクがある行為なのは間違いないのに、自分を貫いている。共感なんて言ったらおこがましいですけど、ちょっとそういうとこありますね。それでいて、あいつになんか文句言われるのを恐れてる自分が“ちっちゃいな”、思いますね(笑)。あいつに文句言われるようなことをどんどんやっていきたいですね」 ーーそういえば、岩橋さんの幻の冠番組があったそうですね。 「関西のローカル局の深夜に、何も放送されていなくて画面が真っ暗になる枠があったんですよ。そこを買って番組を作ろうってお話をいただいて。『はい、やります!』ってなったんですけど、スポンサーからおカネを集めないといけない。じゃあ、その様子をYouTubeで定期的にアップしようって話になった。 大きい貯金箱を背負っていろんな企業の社長に突撃していく。真っ白なTシャツを着て、そこに獲得したスポンサーのステッカーを貼っていく。がらんどうのスタジオに少しずつ機材が増えていくーーという様を見せる。 “最終的に、こんだけのスポンサーからおカネが集まりました”ってところで、『令和の虎』に出させていただいてーーという企画やったんですけど、冷静に考えたら“あんまりやりたくないな”と(笑)。こんなん、テレビに出たい人からしたら飛びつく企画やと思うんですけど、プロジェクトが動き出す前に断りました」 ーー「オールナイトイワハシ」……ちょっと観たかった気がします(笑)。 「この話を断った自分を客観的に見て、“もう違う道に行ったほうがええんかな”って思っているんですよ。たとえば政治の世界。 大多数の人はなかなか立候補する勇気がないと思うんですけど、“暴走”している僕なら面白いかもなと。 もう齢46なんで、万が一、ありがたいことに地元の市長選に受かったとして、市長を4年つとめさせていただいたら50になる。 そっから大阪市長とか、大阪府知事、永田町のほうとか……こうして話していて、めっちゃ興味出てきましたね。先の兵庫県知事選もSNSの影響をすごく受けてましたし、チャレンジしてみても面白いかなと。絶対甘いものじゃないし、有権者は僕に任せたくないと思いますけど……僕が市長になったあかつきには――エアガンの使用を禁止します」 ーーまだ言いますか(笑)。 「芸能界のパワハラを告発するという、変な正義感でこういう状況になっちゃったんで、自分を貫くんだったら政治の世界かなっていうのも、ちょっと思ってます。嫌われたり、仕事がなくなってもいいから、おかしいことはおかしいって言いたかったんです。政治の世界ではもしかしたら、僕のこの姿勢を公平に審判というか、ジャッジしていただけるかもしれない。政治に限らず、僕は実力ある人がちゃんと世に出て評価される、そういう世界にしたいんですよ」 新世界に飛び出した岩橋の目は、清々しいほどに澄み切っていた。
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