英コンクールで聴衆賞のピアニスト牛田智大さん 11月24日、仙台市民交響楽団と共演
福島県いわき市出身のピアニスト牛田智大(ともはる)さん(25)が11月24日、仙台市で開かれる仙台市民交響楽団の創立55周年記念演奏会にソリストとして登場する。9月には英国のリーズ国際ピアノコンクールに出場し、セミファイナルまで進んだ上、聴衆賞を受賞した。ピアニストとして10年以上活躍し、十分な名声を得ている今も挑戦を続ける牛田さんに、音楽への思いを聞いた。(佐藤素子) ■「時間かけつくる音 楽しみ」世界との交流 刺激に -仙台クラシックフェスティバル(10月6日)では、リーズで演奏し、聴衆賞に輝いたシューベルト「ピアノソナタ21番」を取り上げた。作曲家の最後かつ最高傑作とされる作品だが、フェスの演目としてはやや重厚だったのでは。 「私にとってシューベルトは特別な存在。単純な和音、典型的な和声を使ったシンプルな構造なのに、初めて聴いた人の心に触れる。技法だけでは説明できず、謎めいている。彼のピアノソナタをライフワークにしたいと思い、まっさらな状態で『21番』から弾き始めた。今後数十年になるだろうか、時間をかけて弾き続け、自分の作品として育てたい」 -10代前半からプロのピアニストとして活躍しつつ、さまざまなピアニストの下で研さんを積んでいる。多忙な中でコンクールに参加する狙いは。 「定期的に演奏やプログラムを見直すため、仕事をする期間と、ピアノの練習に集中する期間を分けている。練習の過程にコンクールがあり、スケジュールが合えば挑んでいる」 「ピアニストは、1人で弾いていると視野が狭くなる。コンクール出場となれば先生の指導も熱が入り、ピアノの勉強がはかどる。何より世界中から集まる優秀な若手と交流できることは、自分の凝り固まった価値観を変え、いい影響を与えている。特別な緊張感があるが、与えられた特定の課題に集中する時間は大切だ」 -仙台市民交響楽団の演奏会では、同じいわき市出身の小林研一郎さん(84)が指揮をする。共演への期待は。 「仙台市民交響楽団は東北の素晴らしい市民オーケストラだ。地方公演は比較的スケジュールに余裕があり、指揮者、オーケストラとじっくり時間をかけて公演をつくり上げる過程が味わえる。小林先生は、作曲家が楽譜に込めた意図を正しく理想的な状態で演奏することに情熱を傾ける。今回も、どんな音になるのか楽しみだ」 メ モ 仙台市民交響楽団第55回記念演奏会は仙台市青葉区の東京エレクトロンホール宮城で24日午後2時開演。曲目はベルディ「歌劇『運命の力』序曲」、グリーグ「ピアノ協奏曲」。ベルリオーズ「幻想交響曲」。連絡先は交響楽団070(5475)5982。
河北新報