避難所運営に不足する女性の防災リーダー
元日に能登半島を襲った大地震で今も多くの人が避難所で生活しており、とりわけ女性がさまざまな困難に直面している。「ジェンダー視点を取り入れた防災教育」の取り組みを全国で進めている青森県の一般社団法人「男女共同参画地域みらいねっと」代表理事の小山内世喜子さんが、1月30日に開催されたオンラインセミナー(主催・埼玉大学レジリエント社会研究センター、埼玉大学ダイバーシティ推進センター)で、避難所の現状や課題について報告した。 小山内さんは震災から2週間後の1月14日から17日までの4日間、石川県穴水町で避難所の開設支援・運営支援に携わった。人口約7400人の穴水町は1月時点で43の避難所が開設されており、避難所生活者は1500人を超えていた。小山内さんは愛知県からの支援団体に加わり、2カ所の避難所で、プライバシーを確保するための仕切りや段ボールベッドの製作・設置、足湯サロンなどの活動に取り組んだ。 避難所の大きな課題の一つにプライバシーの問題がある。小山内さんが入った避難所も震災後すぐは、施設の部屋に男女混合で数十人、雑魚寝をしている状態で、「プライバシーはほとんどないと感じた」と言う。更衣室は小山内さんが現地に入る前日にやっと設置されたそうで、「それまでは布団の中で着替えたり、半壊の家に戻って洋服や下着を引っ張りだし、余震や倒壊の恐怖の中で着替えてからまた避難所に戻ったりする人もいた」と、着替えさえも命がけで行なわなければならなかった現状を明らかにした。 トイレは仮設トイレが設置されており、男性用、女性用、男女兼用の3タイプがあったが、避難所から離れた場所にあるため、「遠い、寒い、照明もないから暗い。夜は怖くて行けないだろうなと思った」という。実際、トイレに行く回数を減らすため水を飲むのを控え、足がむくんでしまった高齢の女性もいた。 生理用品など支援物資については、震災から2週間後ということもあってたくさんあり、生理用品も自由に使えるようトイレに置いてあった。離乳食やミルクなどは見えるところにあったが、哺乳瓶などは奥の戸棚の中に保管してあり、あることを知らなくて困っている人もいるのではないかと予想された。小山内さんは「量的に十分であっても、一人ひとりのニーズに沿って活用できているとは言いがたい」と指摘した。