遺品整理が大変な原因は”家”にある…専門家が語る、遺産の現金より不動産を優先すべき「納得」の理由
両親が亡くなったとき、実家をどうするか考えているだろうか。実家に戻って暮らすのか、それとも実家を処分するのか。いずれにしても遺品整理が必要だが、そこには想像以上の困難が待ち受けている。いわゆる「親家片(おやかた)」本には、「こうして片づけた」「こうすれば片づけられる」などと成功例が書かれているが、現実はそんな生やさしいものではない。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『遺品は語る』(赤澤健一著)から抜粋して、注意するべきポイントをお届けする。 『遺品は語る』連載第30回 『放置されがちな「魔境」…大切な遺品を見過ごさないために絶対に確認するべき「4つの場所」』より続く
一番難しいのは「家」
遺品整理はなかなかにたいへんな作業だ。また、それに関連する大きなネックも存在する。家自体の処分と相続がそれだ。 すでに触れたように、私どもへの相談事項でもいちばん多いのが家の売却についてである。相続も、現場で遺品整理の仕事をしていてもっとも関わりを感じることが多い事項だ。 いずれも、遺品整理の作業を受託すると依頼者から相談を受けることが多いので、知っている範囲で遺品整理にどのように関連してくるのか説明しておきたい。 遺品整理の際の大きな問題は、故人が住んでいた家の扱いをどうするかだ。賃貸の場合はそこを出ればいいだけだが、親が所有していた場合、その判断を前提にして遺品の整理の仕方も変わってくるはずだ。「思いついたら早めに」は、遺品整理だけでなく、家自体の処分法についてもいえることだ。 現実には、片親が亡くなり、残された親がいる場合は、当面一人暮らしを続け、いずれは高齢者向けの専門施設に移り住むか、子どもの誰かが実家に戻って同居する、といった選択となることが多い。両親とも亡くなった場合は、子どもが実家に戻って住む場合は別として、「売却する」「貸す」「空き家のままにしておく」など処分方法を考えねばならない。
都会の場合、田舎の場合
どんな選択をしても、いざ始めようとすると一筋縄ではいかないものだ。そこで、私ども遺品整理業者に実家の処分について相談してくるご依頼主が珍しくなくなっているのだろう。 実家の処分については、大きくいって都会と田舎とで事情がまったく異なる。都会の場合は、家や土地を売ったり貸したりできることが多いが、田舎で不動産が流通する環境にあることはレアケースだ。 しかも、最近では、遺産の中で不動産の占めるウエートが重くなり、現金・預金などは減少傾向にあるそうだ。高齢化の影響で、以前よりも亡くなられる前に現金・預金が使われてしまうからだという。 相続すべき人が遺言書で決まっていない場合は、遺産分割協議の中で不動産をどうするか検討する必要があり、それがネックとなって遺産分割が進まないこともあるようだ。相続人が分割して所有する形にする例があるが、不動産は簡単には分割できない。面積が同じでも価値が微妙に異なるので平等には分けられないのだ。 使い方など、不動産に対する考え方も相続人によって異なるため、揉めたりするようだ。そのため、売却して金銭で分けることにならざるを得なかったりする。 両親とも亡くなって子どもが実家に戻らない場合や、残された親がいたとしても、一人暮らしが不安で高齢者施設に移り住んだりするケースでは、実家の売却を考える人がいるだろう。
赤澤 健一(グッドホールディングス株式会社代表取締役社長)