諦めてほしくないが…知的障害の孫育てる祖母、投票の「壁」に苦悩 誘導リスクある支援は「答えのない難しい問題…」 葛藤抱える家族や施設の訴え
模索する施設
障害者の投票を巡り模索を続ける施設もある。北信地方のある障害者支援施設では24日、入所者の不在者投票を実施。知的障害などの10人ほどがそれぞれ1票を投じた。 この施設では県の不在者投票所の指定を得た上で一室に投票所を開設。複数の職員が入所者の意向を丁寧に聴き、投票の意思を示した人には障害の程度にかかわらず機会を用意する。事前に候補者のポスターを廊下に張り出し、新聞やテレビで政策に接してもらう。管理者の男性は「職員が政策などを伝えると投票を誘導するリスクが付きまとう。示せる選択肢には限界もある」とジレンマを抱える状況を明かす。
「選挙離れ防ぎたい」
ただ、こうした不在者投票を実施している障害者施設は多くはない。県は公選法に基づき県内394施設(10月9日時点)で不在者投票を認めるが、多くが病院や高齢者施設だ。知的障害者らが利用する小規模施設では少ない。それでも男性は「社会とつながりたい人の意思決定を否定する権利は施設側にはない。障害者の選挙離れを防ぎたい」と話す。
子どもに向けられる目を意識…断念も
「答えの出ない、難しい問題だ」。知的障害者の保護者らでつくる「県手をつなぐ育成会」の中村彰会長(72)=上田市=は言葉を選びつつ、こう話した。わが子の社会的経験を尊重して投票所に足を運ぶ保護者と、意思表示が難しい子に投票所で向けられる目を意識して断念する保護者―。育成会内でも意見は分かれる。「障害の重さによっても考えは異なる」と中村会長。重い知的障害がある自身の長女(33)の投票機会は、一度もつくることができていないという。
こぼれ落ちる声がたくさんあるから
中村さんは「共生社会」を巡る教育や就労現場の課題は山積している―と指摘。政治参加の制度からこぼれ落ち、潜在化する当事者の声が数多くあるからこそ、「政治は福祉に対する一層の目配りを忘れてはならない」と訴えている。