日当5万円超でも苦戦する事態も顕在化…2024年問題による"人手不足" 「効率化&技術継承」に打開策を見出す建設現場 北海道
従業員約30人のなか、2024年の新入社員は異例の人数でした。なんと新入社員が4人も入ってきたのです。 「技術力の高い会社が北海道に少ない。いい会社だと思った」(大工志望)
「雑誌の中で武部建設が施行した物件を見て、実際に建てているモノを実現している人たちと仕事をしたいと思い入社しました」(設計・施工管理志望) 武部建設が手掛けた長沼町の馬追蒸留所です。カラマツ、タモ、ナラ材など北海道産材をふんだんに使いながら張弦梁構造を採用することで柱がない大空間を実現させています。こうした技術力の高さからくる物件に魅力を感じ入社を志望したと言います。
人気の理由はこれだけではありません。 「うちは大工が社員として在籍しているのが会社としての特徴で、全国的に見ても少数」(武部建設 武部 豊樹 社長) 武部建設では約30年前から社会保険を完備した社員大工としての雇用を進めてきました。 「仕事がなくなったり薄かったり、安定感のない時に保証があるかないか。就職段階で学校の先生も考えるし、親御さんはもっと考える。だから若い人が職人として入ってこないのが現実的な姿」(武部社長)
一般的な工務店では、大工は正社員ではなく業務委託や請負として下請けになっています。肉体労働をする大工に社会保険などを整備し生活を支えることで、若者にも建設業界を選んでもらおうと導入しました。 さらに、技術の継承です。現代の木造建築は、コストカットや工期短縮のため工場で生産された木材で住宅を作る「プレカット工法」が90%以上を占めていますが、武部建設は、伝統技術による木造建築にこだわり社員大工を育てています。
「どこで継ぎなさいとかは書いていない。材料と長さと場所によって自分で考える」(棟梁) 設計図を基に柱や梁などを書き写した「板図」。棟梁がこれをもとに木材に「墨付け」していきます。
墨付けされたものをノミを使って手で刻むのが「手刻み」。 「あまり(手刻みを)やらせてくれる会社がないのでやりたかった」(見習い大工) 現場にいたのは下は18歳から上は78歳まで。幅広い年代が混在することで、技術を伝える環境が生まれます。