御殿場市印野地区で探検!霊峰の“胎内”【わたしの街から】
雄大な富士山の麓に位置する御殿場市印野地区。過去の噴火の影響が色濃く残る溶岩地帯の変化に富んだ地形と富士山麓の豊かな自然が調和する。富士山学習の絶好の場である地区の魅力を一度に感じることができるのが、国指定天然記念物の洞窟「印野の溶岩隧道(ずいどう)」がある富士山御胎内清宏園だ。洞窟は「御胎内」との通称で親しまれ、子宝のパワースポットとしても人気が高い。
■御胎内清宏園、噴火が生んだ神秘の洞窟
御胎内の呼称は「U」の字形の洞窟の形と溶岩が冷え固まった岩肌の様子が、人間の体内に似ていることに由来する。洞窟内に胎内神社の前殿、本殿、奥殿に当たる石祠(せきし)があり、祭神として富士山の守り神で安産、子宝の神でもある木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)と猿田彦命(さるたひこのみこと)を祭る。江戸時代を中心に明治、昭和初期にかけて富士山を霊場とする修験道の行者や富士講信仰者が訪れ、御胎内で身を清めた。洞窟外の同神社の社殿にも安産祈願者が集まる。
静岡県や同市教育委員会によると、400年代の古墳時代中期、富士山東側の側火山である北赤塚、赤塚、馬ノ頭から噴出した溶岩流が樹木を巻き込み、幹や枝が焼け消えた結果、固まった溶岩の中に円筒形の空洞が残ったという。洞窟を保存するため1927年、国の天然記念物に指定された。
園内は1707年の富士山宝永大噴火により埋まった溶岩地帯に、長い年月を経て樹木が茂り、変化に富んだ豊かな森を形成している。フジザクラやヤマツツジなど四季折々の花々が彩り、ナラの美林や富士、愛鷹、箱根山系に特有の高山植物なども見られる。多種の野鳥が飛来し、約11ヘクタールの「野鳥愛護林」で地元印野小の児童たちが独自の野鳥愛護活動に励む。
同園を管理する印野郷土振興協会の勝間田政道理事長は、「園内はナラ枯れの影響で森の一部を伐採し、現在は再生に向けた植栽活動などを続けている。今後も自然や歴史を大切に継承していきたい」と語る。