一目でわかる「トランプ再選」で激変しうる「7つの国際問題」─イスラエル、ウクライナ、中国はどうなる?
2024年11月5日に投票がおこなわれた米大統領選で、ドナルド・トランプ前大統領が2度目のホワイトハウス入りを果たすことになった。 【オリジナルサイトで読む】トランプの復権の衝撃【特集】 この勝利は、世界的な波紋を呼ぶと予想されるが、彼の支持者や前国家情報長官代理のリチャード・グレネルが言うように、トランプの外交政策は「予測不可能」だ。米国の同盟国も含め、「次に何が起こるか」、誰もが予測に苦労している。そんななか、米「ワシントン・ポスト」紙が、今後、世界が受けるであろう影響、そして各国の懸念を7つのポイントにまとめた。 ①イスラエルは中東での戦争拡大の「背中を押される」かもしれない トランプは前政権時代、在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムに移すなど、親イスラエル的な姿勢を見せている。また、プライベートでもイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフに支援を申し出ており、最近も電話で「やるべきことをやれ」と話したとされる。 ②米国からの支援縮小に備えるNATO加盟国 トランプは北大西洋条約機構(NATO)に対し、加盟国が米国に財政面で過度に依存していると非難し、敵対的な態度をとってきた。選挙キャンペーン中には、ロシアに対し、国防費を増やさないNATO加盟国を攻撃するよう働きかけるような発言をし、もともとソ連に対抗するために作られたこの同盟からの離脱さえもほのめかしている。 ③ウクライナは領土の譲歩を恐れている トランプと共和党は、ウクライナへの資金援助に懐疑的な見方を示している。彼は電光石火のスピードで「この紛争を解決できると考えている」というが、ウクライナはロシアへの領土の譲歩を求められるのではないかと恐れている。とはいうものの、ゼレンスキー政権の多くの閣僚は、トランプ勝利のプラス面も見ている。彼らはバイデン政権のあまりに慎重な態度によって、より強力な武器の使用や、制限の緩和が遅れてきたことに不満を抱えていた。 ④民主主義の規範が問われかねない これまでもトランプは演説で、独裁者を称賛し、国内の「内なる敵」(左派)に対し、軍隊の出動も示唆するなど、民主主義の規範を公然と無視しつづけてきた。国連人権理事会からの脱退や、報道機関への脅しなども含め、彼のレトリックは国際社会に冷ややかな影響を与える可能性があると専門家は指摘する。台湾に防衛費を払うべきだと発言したかと思えば、金正恩を称賛するなど、アジアでも懸念が広がっている。 ⑤世界的な気候変動協定からの再離脱 猛暑により、今後数十年以内にアジアやアフリカの一部が居住不可能になると予想されるなか、世界規模の気候変動対策に取り組む政治家たちは、その政策がトランプのもとで停滞することを恐れている。気候変動を「デマ」だと考えているトランプは、環境保護のために策定された100以上の規制を前政権で撤回・撤廃した。また、今回の大統領選でも、一期目と同様にパリ協定から離脱することを公約にしている。 ⑥貿易摩擦の激化に備える中国 トランプは、「ほとんどすべての輸入品」に10~20%の関税をかける考えを公にしている。さらに、中国からの輸入品に対しては、関税を60%にまで引き上げることを内々に議論しているとされる。共和・民主両党のエコノミストは、これは米国経済と世界経済に大きな混乱をもたらし、その混乱は第一次政権における貿易戦争をはるかに上回る可能性があると指摘する。 ⑦「米国史上最大規模の強制退去」に警戒するラテンアメリカ 世論調査では、バイデン政権によるメキシコ国境政策に不支持を示す有権者が多かった。そのため、国境の安全確保は、移民を繰り返し中傷してきたトランプのキャンペーンの中心だった。前政権でも彼は移民の制限を推し進め、今回もそれをおこなうと表明している。また、不法移民の強制送還計画は、トランプの選挙公約の上位に位置しており、トランプはそのための州兵の動員も検討している。
Courrier international