中村米吉の#カワイイは世界を救う?第20回 ガウディ建築を“カワイイ”視点で見学
8月の歌舞伎座公演の、京極夏彦が脚本を手がけた新作歌舞伎「『狐花』葉不見冥府路行」にて、純情可憐な美少女・雪乃役を勤めた中村米吉。地下牢に閉じ込められた雪乃を、中村七之助扮する美青年・萩之介が助けに来るシーンは、まるで少女マンガのような麗しさ。見つめ合う2人の美しさ、そして次々と明かされる衝撃の真実で、観客を圧倒した。 【画像】青空の下そびえ立つ、建築家アントニ・ガウディによる“未完の聖堂”。圧巻!(他24件) このコラムは、花のようにカワイイ米吉が、身の回りのカワイイを紹介し、カワイイ×カワイイの相乗効果で読者の心を癒やすことを目的としている。今回は、米吉の“羽子板”(羽子板→羽つき→羽・月→ハネムーン)旅行記の第2弾! フランスで美術館を満喫したあと、スペインに移動した米吉夫婦のその後が描かれる。美しいヨーロッパの魅力を、“カワイイ”視点で再発見してくれる米吉のあとに続こう。なお旅中では、次は博多で共演するあの先輩や、“お鼻テカテカ”な道化師との出会いも! 題字:中村米吉 ■ ガウディ建築の魅力を“カワイイ”視点で見学 テレビという匣の中。 パリから届くアナウンサーや解説者の熱のこもつたリポートの向こうから、現地のパトカーのサイレンが聞こえてきてゐる。 ああ、懐かしい。 何だか酷く羨ましくなつてしまつた。 と、そんないけ好かない感想を抱く筆者ですが、こんな文章を書きがちの方がお書きになった「狐花」の複雑怪奇さと、夏の暑さに頭の中もごっちゃごちゃ。 旅行の記憶がずいぶん奥にしまわれてしまいました。 とはいえ、せっかく始めた“羽子板旅行記”。完遂せねば! アルハンブラ宮殿をあとにして、バルセロナに入った我々を出迎えてくれたのはご存知、サグラダ・ファミリア! まるで歌うかのように、「ようこそここへ クック クック」と出迎えてくれました(笑)。 ガウディ建築の魅力を“カワイイ”視点で見学してみましょう。 美しいステンドグラスは、今はもう味わえないチェルシーを思い出して切なカワイイ。 カタツムリの殻のようなカワイイ螺旋階段。これ、写真撮る方は相当怖いみたい。 螺旋階段の途中は何だか牢屋のよう。 次の月の芝居で牢に入れられるとは露知らず、キメ顔なのが恥ずかしい(笑)。 帰りがけ、ブロンズで出来た蔦の中にたくさんの愛らしい虫のいる扉で、偶然にも先輩とすれ違いました。 次は博多で会えることでしょう。大和国に帰ってくるな、とか言わないでね。 もう1つ、コロニア・グエルというこちらも未完成のガウディ建築も見学。 サグラダ・ファミリアは様々な事情から建築が長くかかっている訳ですが、こちらは完成する前に計画が中止になったことによって未完成という教会。 ガウディのすべてが詰まった最高傑作になる予定だったというのに残念です。 目についたのはこのステンドグラス。 まるで蝶が羽ばたくかのような開閉式。 これ、四隅が開くと十字架が現れるのです。何とおしゃれで信仰心に篤いのだろうか! ガウディと名残を惜しみつつ、スペインを発ち、イタリア ヴェネツィアへ! お洒落でカワイイ街はドアノブもヴェネツィアンガラス! ディズニーシーにいるみたいでウキウキした気持ちになりました(逆だろ)。 ヴェネツィアでは我がイケメンの再従兄弟様に縁をつないでもらった、ヴェネツィアガラスアーティストの土田康彦さんとお目にかかりました。 アーティスティックでありながら可愛らしく、奥に潜むテーマが感性を刺激する素敵な作品をたくさん拝見。 こちらの“蜃気楼”を結婚のお祝いにと贈ってくださり、今我が家に鎮座ましましております。 果物のような形のつるんとした形状に深い深い青。そこに浮き上がる金箔の蜃気楼のような模様。 貴重なものを、本当にありがとうございました。 土田さんには旅行中、大変お世話になりました。 また会う日までお元気で! ヴェネツィアからは高速列車でフィレンツェを経由し、ナポリに向かいました。 ナポリの旧市街では“プルチネッラ”という道化師の銅像に遭遇。 鼻をみんなが撫でるから、鼻がテカテカに。 現地のガイドさんは、みんなを笑わせるその裏で、仮面の下では泣いていると言っていました。 まるで歌舞伎役者の様ですね!(笑) ナポリから船に乗りカプリ島へも足を伸ばしました。 青の洞窟を見学後、リフトに乗ってソラーロ山に登りました。 リフトが暑すぎて日傘を差して、さながら気分は“骨寄せ岩藤”!(メリーポピンズじゃないところがミソです) レモンで有名なカプリ。CARTHUSIAという歴史ある香水屋さんで香ってきた柑橘の香りの香水をつい買い求めてしまいました。 博多では本物の“橘の香り”を撒き散らしてやるつもりです! カプリからナポリに戻り、アマルフィへ。 とても素晴らしい街で、旅の最後を飾るのにふさわしい滞在地となりました。 鮮やかなパラソルに彩られるビーチは圧巻の可愛らしさ。 ビーチで遊ぶための入場料は可愛くありませんでしたが(笑)。 アマルフィでゆったりと過ごし、帰国の途につく道すがら、欲張りな我々は帰国直前に“カゼルダ宮殿”を観光。 これでパリのヴェルサイユ、スペインのアルハンブラと、3カ国で宮殿を巡ることになりました。 カゼルダ宮殿の装飾品の可愛らしいこと! ヴェネツィアガラスのシャンデリアに鳥かごの時計! おしゃれすぎるんだわ! 最後までしっかり観光し、帰国の途についた我々に待っていたのはナポリ-パリ行きの飛行機の大遅延。 パリから日本へ乗り継ぐ予定の私たち。 このままでは、帰国翌日に出演を控えた紀尾井町家話にシャルル・ド・ゴール空港から参加することになる!! 飛行機を降りて、日本行きの飛行機にギリギリ間に合うかもしれないと、旅の最後に猛ダッシュ。 ところが なんと 結局、日本行きの飛行機も遅れていてあっけなく間に合ったのでした。 めでたしめでたし。 家に帰るまでが遠足、と言いますから、最後に自宅に連れて帰ってきたものをご紹介しましょう。 アンダルシアで買ったタイルの時計に、ヴェネツィアで一目惚れしたガラスの時計。 余程時間が気になるらしい(笑)。 アルハンブラで買った寄木細工の小箱にキーホルダー。工房でおじいさんが目の前で作ってました。 ヴェネツィアガラスの写真立てと小皿はおそろいの柄。 細かいものばかりですけれど、みんなカワイイ!! え? 折角なのにこんな簡単なものばかりで良いのか? 良いんです! 思い出が大事なんだから! 奥さんはバッグとか買ってたけどね……(笑)。 □ プロフィール 中村米吉(ナカムラヨネキチ) 1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。2022年7月に上演された「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」、2022年12月から昨年1月にかけて上演された「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務め、昨年3・4月に上演された「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」、今年2・3月に行われたスーパー歌舞伎「三代猿之助四十八撰の内『ヤマトタケル』」東京公演では、それぞれヒロイン役を勤めた。9月1日に東京・歌舞伎座で開幕する「秀山祭九月大歌舞伎」昼の部「『摂州合邦辻』合邦庵室の場」で浅香姫役、「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」で玉蓮役を演じる。10月には福岡・博多座での「ヤマトタケル」で兄橘姫 / 弟橘姫、みやず姫を中村壱太郎と回替りで勤め、11月には、東京・明治座での「明治座 十一月花形歌舞伎」昼の部「藤娘」で藤の精、夜の部「鎌倉三代記」で、女方の大役である三姫の1つ時姫に挑む。9月21日には「中村米吉 トークショー2024AUTUMN」が開催される。