【週末映画コラム】24年ぶりの続編『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』/デジタル化社会の功罪を鋭く描いた『本心』
【週末映画コラム】24年ぶりの続編『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』/デジタル化社会の功罪を鋭く描いた『本心』 2/2
『本心』(11月8日公開) 舞台は近未来。工場で働く石川朔也(池松壮亮)は、同居する母の秋子(田中裕子)から「大切な話をしたい」という電話を受けて急いで帰宅するが、豪雨で氾濫した川べりに立つ母を見つける。朔也は母を助けるために川に飛び込むが昏睡(こんすい)状態に陥る。 1年後、病院で目を覚ました朔也は、母が“自由死”を選んで亡くなったことを知る。勤務先の工場はロボット化の影響で閉鎖になり、朔也は激変した世界に戸惑いながらも、カメラを搭載したゴーグルを装着して遠く離れた依頼主の指示通りに動く「リアル・アバター」の仕事に就く。 ある日、仮想空間上に任意の“人間”を造る「VF(バーチャル・フィギュア)」の存在を知った朔也は、母の本心を知るため、開発者の野崎(妻夫木聡)に母のVF作りを依頼する。その後、母の親友だったという三好(三吉彩花)が台風の被害で避難所生活を送っていると知り、完成した母のVFも交えて一緒に暮らすことになるが…。 石井裕也監督が平野啓一郎の同名小説を基に、発展し続けるデジタル化社会の功罪を鋭く描いたヒューマンミステリー。田中裕子が生身の母親役とVFの二役に挑み、綾野剛、田中泯、水上恒司、仲野太賀らが共演。石井監督と池松は9作目のタッグになるという。 AI、バーチャルリアリティーへの依存というSF的な発想を使って、人間の本心を知ること、あるいはAIと疑似会話をすることは果たして幸せなことなのか、またアイデンティティーとは何なのかを問う点では、先に公開された、クローンを扱った甲斐さやか監督の『徒花-ADABANA-』とも通じるものがある。 そう考えると、映画の作り手たちは最新のテクノロジーに敏感に反応し、それを積極的に取り入れる半面、それに対する恐れも抱いているのではないかと感じる。実のところ、今は、亡くなった俳優や本人に似せたAIを“出演”させることもできるのだ。では、俳優の存在とは一体何なのか…。この映画はそうした心情も反映していると思う。 (田中雄二)
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