久保多気町長が副組合長理事　有事に農業者の生活再建向けデータ提供

署名押印した協定書を持つ下村町長（右）と和田専務理事＝明和町役場で

　農業者に対する農業災害補償制度を運用する三重県農業共済組合（NOSAI三重、本部＝津市、加入農業者＝約2万5千戸）は本年度、県内の全自治体（29市町）と順次、「災害時の協力に関する協定」を締結しようとしており、松阪地区でも9月の多気郡多気町に続いて、10月16日に同郡明和町と協定書を取り交わした。 　同制度は農業保険法に基づき、全国農業共済組合連合会（NOSAI全国連）と国により運営、各都道府県には農業共済組合がある。 　NOSAI三重は8人の役員（理事・監事）のうち5人を自治体の首長、3人を農家が務める。河上敢二熊野市長が組合長理事、久保行央多気町長が副組合長理事、末松則子鈴鹿市長が代表監事、伊藤徳宇桑名市長と前葉泰幸津市長が理事で、この5市町と9月18日に協定を結んだのを皮切りに、年度内に29市町全てとの締結を目指している。 　同協定は災害時にNOSAI三重が持つ被災地に関するデータを自治体に提供することで、自治体が行う被害認定調査などに役立ててもらい、農業者の生活再建を迅速かつ円滑に行おうというもの。 　この日は河上組合長が署名押印した協定書を持って和田隆専務理事（63）が明和町役場を訪れ、下村由美子町長が署名押印した。 　和田専務理事は「昨今の自然災害は激甚化の一途をたどり、今年早々に起こった能登半島地震、さらに追い打ちを掛けるように豪雨被害を受けた。私ども農業共済としては農家への補償を主に行っており、国民の胃袋に入る食糧の供給態勢を早急に復興させないと食糧安全保障の面から多大な地域に被害が及ぶ。補償だけではなくて、私どもが持っているデータを行政に提供することで、そのデータを元に行政が迅速に対応できることが願い」と述べた。 　NOSAIと行政の協力が緊密になったのは2011（平成23）年の東日本大震災にさかのぼるが、今年5月2日に県市長会と県町長会が津市で開かれた際、会場へ出向いて協定の話を持ち掛けたところ、賛同を得、順次締結へと進みだした。全国でも初の試み。 　明和町内では約350戸の農家がNOSAI三重に加入している。小規模な農家も合わせると町内に約670戸あり、それら全農家を対象に、緊急時に町の依頼を受けて調査することができるという。 　下村町長は「先日の台風10号では（全県で）約9億8千万円の農林水産関係の被害が出ていると聞く。この度は災害時の協力の申し出を受け、ありがたく思う。災害被害に関する情報提供を迅速に受けることで、町が実施する認定調査、生活再建への円滑な対応につなげられる」と話した。