アングル:UAEの金融拠点化推進、アブダビがドバイに負けじと貢献
Nell Mackenzie Federico Maccioni Hadeel Al Sayegh [ドバイ 24日 ロイター] - アラブ首長国連邦(UAE)が世界的な金融拠点の代替地としての役割を固める上で、首都アブダビが大きな役割を果たす存在として浮かび上がってきた。これまでドバイの陰に隠れる存在だったが、独自に資産運用会社や億万長者らの資産を引き寄せているからだ。 中東にありながら石油埋蔵量が豊富なわけではないドバイは低税率、英国普遍法の適用、この地域の活発な経済成長へのエクスポージャーを武器として過去20年で地域最大の金融センターとしての地位を築き上げた。 グローバル・フィナンシャル・センター・インデックスの世界での金融センターの最新ランキングによると、ドバイが16位、アブダビは35位。中東・アフリカ地域だけで見るとそれぞれ首位、2位となった。 一方、UAEの石油埋蔵量の90%を占めるアブダビは過去数年間に経済の多様化への取り組みを加速させ、計2兆ドル弱(約300兆円)を運用する莫大な資産と政府系ファンド(SWF)を活用して非石油セクターの成長を後押しした。 アブダビの投資によって生み出されたさまざまな新分野や事業の可能性は国際的な金融界からも注目を浴びている。 アブダビを拠点とするファンド運用・投資顧問会社、ネオビジョン・ウェルス・マネジメントの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のライアン・ルマンド氏はドバイで開かれた数百人が出席する会議で、「この1年ですっかり様変わりし、資金運用会社やヘッジファンド、オルタナティブ投資会社などがここで資金を調達するために会議に訪れるようになった」と語った。ロンドンや米ニューヨーク、香港から新しい事業を開拓するために来る人たちよりも優位に立つため、ドバイだけでなく最近ではアブダビに店舗を構える動きも出ていると説明した。 アブダビとドバイを完全に比較できる指標はないものの、依然として大きくリードしているのはドバイの方だ。ドバイ国際金融センターの幹部は、ドバイには計420社を超える資産管理会社と資産運用会社が進出していると紹介。アブダビの最近の統計はなく、今年6月末時点のデータによると112社のファンドが登録されている。 しかし、会議に出席した8人はアブダビの方が明らかに勢いはあるとの見方を示した。 <新しいライバル> 彼らはその要因として登録企業数の増加、SWFによる誘致、現在はドバイに匹敵し、他の金融センターと比べて容易な営業免許取得を挙げた。 ヘッジファンドのブリッジウォーター・アソシエイツの創業者で、億万長者のレイ・ダリオ氏や、ブレバン・ハワードなどのヘッジファンドはアブダビに進出している。米保険会社プルデンシャル・ファイナンシャルの資産運用部門PGIMや、ヌビーンも姿を現した。 830億ドルを運用するニューヨーク拠点のプライベート・エクイティ(PE)会社ジェネラル・アトランティックも予備承認を取得後に拠点を築く予定だ。 アブダビ・グローバル・マーケットのデータによると、アブダビでは計10社を超える資産運用会社やヘッジファンドが原則として事業の承認を得た。 今月発表されたグローバルSWFの報告書によると、SWFが保有する資産額でアブダビは世界最高の1兆7000億ドルに上る。ドバイでは同様のファンドの運用額は約5000億ドルにとどまる。 ある投資会社の従業員は、SWFの存在感が大きいことがアブダビに進出するインセンティブになっていると言及した。 また、UAEは暗号資産(仮想通貨)産業でも世界的な拠点となることを目指している。ドバイでは仮想通貨の規制当局が2022年に立ち上がった。 米国には連邦レベルの包括的な規制の枠組みがなく、欧州連合(EU)の規則は年内に施行される。 アブダビとドバイは観光と不動産投資の促進にも力を入れており、より長期間にわたって国際的な金融業界と活気のある娯楽産業を引き寄せてきたドバイが依然として先を行っている。 世界一高い超高層ビルのブルジュ・ハリファがあることを誇るドバイは、ナイトクラブや高級レストランの数でも明らかにアブダビより優位に立っている。あるヘッジファンドの専門家は、ドバイの金融街が「活気に満ちている」と表現した。