〝最愛の人〟奪われた9歳少女の成長が響く 「リトル・エッラ」クリスティアン・ロー監督
9歳の少女の豊かな感情を、ユーモアたっぷりに描いたスウェーデンの「リトル・エッラ」。北欧らしい自由な空気が漂って、子供から大人まで楽しめる。公開に合わせて来日したクリスティアン・ロー監督は「小さい時に悟った小さなことが、(将来の)非常に大きなことにつながっていくと思う」と話した。 【動画】友達なんていらないって思っていたけど…、9歳少女の感動成長物語「リトル・エッラ」予告編 エッラは人と仲良くするのが苦手な小学生。唯一仲が良いのはおじさんのトミーだ。両親が休暇で留守の間、トミーと過ごすのを楽しみにしていたのに、トミーの恋人・スティーブがオランダからやってきた。2人は英語で話すから、エッラは蚊帳の外。のけ者にされてトミーを取られてしまうと心配になったエッラは、転校生のオットーに相談。スティーブを追い返す作戦を繰り返すのだが……。
人気絵本が原作 大人にも響くように
スウェーデンの人気絵本作家、ピア・リンデンバウムの「リトルズラタンと大好きなおじさん」が原作。「わずか30ページほどの本だったので、転校生のオットーやスティーブを追い返すためのいたずらを加えた」。子供向け映画のように思われがちだが「大人にも響くようなセリフやシーンを心がけた。小学生も理解できて、大人の観客も満足できる作品にしたつもりだ」と語る。 エッラの再三にわたるいたずらにあっても、トミーは怒鳴ったりしない。映画全体にギスギスしない空気がある。「トミーは我慢強いキャラクター。エッラは自分だけに関心を向けてもらいたがっていたけれど、人の痛みを学ぶことで、自分の好きな人が他の人と幸せになることを選ぶキャラクターになっていく。エッラの成長物語になっている」 9歳でそこまで考え理解していく子供は北欧にはいるのかと聞いてみた。「コメディータッチを強調しているが、自分の欲求よりもほかの人の幸せを考え優先する子供は結構いると思う。もう少し年を重ねてティーンエージャーになると、それが友情の育み方に発展していく」と話す。北欧社会ならではの部分があるのだろうか。「スカンディナビアの国々は、ほかのヨーロッパと比べても自由度が高いと思う。大人たちの価値観や考え方が子供たちに影響を与えているのは確かだろうし、そこから学んで育ってほしいと願っている。といっても9歳の子供にそんなに大きな期待はしていないけれど」 自由度とはどんなことか。「例えば、オーガナイズされた多くのクラブがある。安全で、あまり制約がなく自由に遊ぶことができる」。こうした環境が、考え方や成長を促しているというのだ。