年金繰下げ、するんじゃなかった(涙)…70歳まで歯を食いしばり、必死の先送りで増額も「削り取られる金額」に絶望【FPが解説】
年金額の増額で「税金&社会保険料」が増額される!?
ほかに繰下げで不利になる可能性があることとして、繰下げ受給で年金額が増えると、税金や社会保険料の負担が重くなってしまう、ということが挙げられます。 所得税は、所得が高いほど税率が上がっていく累進課税方式が採用されています。そのため、年金額が増えると適用される税率が上がってしまう場合があるのです。同様に、年金額が上がり、所得が増えると、健康保険料や介護保険料も増えることになります。 そもそも、少子高齢化で年金財政は厳しいですから、5年後の社会保険料は、いまより上がっている可能性があります。将来的に年金は減らされることはあっても、社会保険料や所得税が減ることはないでしょう。 そのことを加味すると、早い段階で受給を開始する、というのも選択肢の一つでしょう。
年金額の増額で「医療費の自己負担割合」が上がる!?
年金額を増額させることによって不利になる点はまだあります。 所得が増えることによって、病院の窓口で支払う医療費の自己負担割合が高くなる可能性があるのです。75歳以上の後期高齢者医療制度では、所得145万円以上になると自己負担割合が3割になってしまいます。年金額が42%増えても、医療費の支払額が増えてしまうと、総合的にみると損をしてしまう可能性があるのです。そのため、定期的な通院が必要な方の場合は特に注意が必要です。 また、医療費が高くなってしまった場合にも、健康保険には、毎月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合にその超過分を払い戻してもらえる「高額療養費」という制度があります。 しかし、年金額が増えて課税所得が145万円以上になると、高額療養費の上限額が1.4倍に上げられてしまいます。 このように、年金額を増やそうと安易に繰り下げ受給をしてしまうと、かえって損をしてしまう可能性があります。どのように受給するのが一番得をするのか、総合的に判断をして、受給開始時期を決定することをお勧めします。 岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)