迫ってきた「ボクシング四大世界戦」―注目される井上兄弟
「5・6東京ドーム決戦」が近づく。当日は、井上尚弥(大橋)-ルイス・ネリ(メキシコ)の世界スーパーバンタム級タイトルマッチをメインイベントにした「四大世界戦」が挙行される。トリプル世界タイトルマッチは過去に日本で何度か例があるものの、一つの興行で世界戦4試合となると今回が初めて。 ちなみにアメリカでは「八大世界戦」(2003年12月)という信じられない興行記録が残っている。これはやりすぎというものだが、世界タイトルマッチ4試合すべての結果予想を的中させるのは専門家といえども簡単ではあるまい。 5月6日の四大タイトルマッチは尚弥-ネリ戦のほか、WBO(世界ボクシング機構)バンタム級タイトルマッチ=王者ジェイソン・マロニー(オーストラリア)-挑戦者・武居由樹(大橋)、WBA(世界ボクシング協会)バンタム級タイトルマッチ=王者井上拓真(大橋)-挑戦者・石田匠(井岡)、WBAフライ級タイトルマッチ=王者ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)-挑戦者・桑原拓(大橋)というラインナップ。
兄だけではない注目の試合
今回はWBAバンタム級戦にフォーカスしよう。チャンピオン井上拓真対同級1位石田の指名試合である。 この一戦は勝敗予想でいえばチャンピオン井上拓真の優位は動かない。昨年4月、リボリオ・ソリス(ベネズエラ)を破ってタイトルを獲得した拓真はご存じ、尚弥の実弟。もともと高い素質を評価されていた拓真はここにきて、それにふさわしいパフォーマンスをリングで示し始めた。 今年2月の初防衛戦では難敵ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)に9ラウンドKO勝ち。スーパーフライ級の世界王座を連続9度も防衛したフィリピンのサウスポーを攻撃的なボクシングで攻め落とした試合はまさに井上弟の“覚醒”を思わせるものだった。アンカハス戦からわずか2ヵ月半の間隔で次戦に臨むというのも、心身ともに充実のいまこそできることだろう。対戦相手を軽く見ているのではなく、指名挑戦者を撃破してさらなる成長を見越しているのだ。 そういうチャンピオンに挑むのが関西のベテラン石田である。こちらは足掛け16年のプロ生活となる32歳。今回が世界王座2度目のチャレンジとなる。身長171センチ、スピーディーな左ジャブと右ストレートを駆使したボクサー型だ。スタイルをそっくり表すかのような美男子だが、究極の目標である世界チャンピオンのベルトはまだ巻いたことがない。